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発達障がいの子 初診までの期間短縮を
現状では数カ月待ち
自閉症や注意欠陥・多動性障がい(ADHD)といった発達障がいの疑いのある子どもたちが、病院の初診までに数カ月から半年以上も待たされてしまうケースが相次いでいる。少ない専門医療機関に受診の希望が集中しているためで、国は今年度、解消に向けた事業に着手した。
専門医不足で予約集中
子どもの発達障がいは、早期発見・診断により、適切な医療や、特性に応じた教育・トレーニングなどの「療育」を受けることが望ましいとされる。支援に結び付くことで、子どもが可能性を大きく伸ばしながら成長できるとともに、保護者の不安や負担も軽減される。
だが、各地の専門医療機関では、受診を希望しても予約が数カ月先まで埋まっていることが珍しくない。総務省が全国27医療機関を対象に行った調査(2017年1月発表)によれば、発達障がいの初診まで平均3カ月以上かかる医療機関は全体の半数以上にも上った。最長10カ月のケースもあったという。
背景には、発達障がいの専門医の不足がある。
発達障がいの診断は、生育歴の確認や心理検査、保護者のカウンセリングといった複数の過程があり、1人の診断までに時間がかかる。その半面、診療報酬は低いことから、積極的に診察する専門の医療機関は限られているのが実情だ。
一方、近年、発達障がいに対する社会的認知度は高まっており、子どもの受診を望む保護者は増え続けている。
厚労省が解消事業に着手
生育歴調査など事前評価を外部委託へ
厚生労働省は、16年度以降、発達障がいの診断までの時間を短縮するため、かかりつけ医らに診断や支援について学んでもらう研修の開催などに取り組んできた。さらに今年度は、医療機関の負担を減らすことで、待機解消をめざす事業を一部の自治体で行う。
具体的には、生育歴の調査や心理検査といった診断前までに医師らが行っている事前評価を、児童発達支援センターなどに外部委託する。医療機関が診断のみに専念できるようにする狙いがある。
厚労省障害福祉課は「診断までの過程を見直すことで、待機期間の解消にどれだけ効果があるのかを見て、今後の支援策を検討したい」と話す。
鹿児島の事例参考に
厚労省が事業の参考にしたのは、鹿児島県の事例。公明党鹿児島県議団が推進してきた取り組みだ。
同県では、こども総合療育センター(鹿児島市)に受診希望が集中。そこで、14年度から、未就学児の初診の予約をセンターが直接受け付けるのではなく、保育所・幼稚園、市町村、児童発達支援事業所を通して受け付ける制度に変更した。翌15年度には、学齢期の子どもも、学校を通じて初診予約を受け付けることにした。
その際、学校や保育所といった機関は、センターへの受診紹介票に、子どもの困りごとなどの情報を整理し記入した上で、予約を申し込む。センターは、家族と学校などに直接、電話で状況を聞き、可能な助言を実施する。
これにより受診前から支援が開始され、家族の不安が軽減するだけでなく、緊急性などの高いケースから優先的に受診できるようになる。
この仕組みは大きな効果を発揮しており、初診待機期間は13年度末時点の約6.2カ月から、16年度末時点の約2.5カ月へと大幅に短縮。また、診断待ちの期間も、子どもが療育支援を受けるなど有効活用につながっている。
同県は、保育所や幼稚園、学校と連携した療育などの地域支援体制づくりに力を入れており、同センターの外岡資朗所長は「地域のさまざまな機関が支援する『診断前支援』の仕組みが重要だ」と強調する。
診療報酬見直しを含め支援策に全力
党障がい者福祉委員長 山本博司 参院議員
発達障がいの診断までに長期間の待機を余儀なくされる問題が慢性化しています。これまで公明党は、家族会や医療関係者などから改善を求める声を重く受け止め、国会質問などを通して政府に対応を促してきました。
今年度、厚労省が待機解消に乗り出したことは一歩前進です。今後も、実態把握に努め、各地の先進事例を参考に支援策を全国に広げてまいります。
一方、専門医の不足に対応するには、医師のさらなる養成に加え、診療報酬の見直しが欠かせません。18年度の診療報酬改定で、小児科医だけに加算が限られていた、発達障がいに関するカウンセリング料が、心療内科医にも認められましたが、もっと踏み込んだ対応が必要です。公明党は、政府に積極的に見直しを訴えていきます。