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最低賃金 引き上げの意義と課題
全ての労働者に適用される最低賃金(時給)の引き上げが続いている。厚生労働省が9日に発表した2019年度の都道府県別最低賃金は、全国平均が前年度から27円多い901円となり、初の900円台に達した。引き上げ幅も前年度を上回り、2年連続で過去最大を更新した。引き上げの意義や背景、今後の課題などについて解説する。
経済の好循環に不可欠
19年度、初の平均900円台に
都道府県別に見た19年度の最低賃金は、最高額が東京の1013円で、次いで神奈川の1011円。いずれも初の1000円台となった。最低額は鹿児島など15県が790円で並んだ。
厚労省の中央審議会が示した目安を超える上げ幅を決定したのは19県。このうち、前年度に単独で最低額だった鹿児島県は全国で最大となる29円の上げ幅を記録した。目安超えの動きは、人口減少や地域の活力低下に直面する自治体の危機感の表れとも言える。
また、最高額と最低額の差は前年度より1円少ない223円に縮小した。格差が縮まったのは、03年度以来16年ぶりのことだ。
最低賃金の引き上げについて、政府は公明党などの推進により、16年に閣議決定した「ニッポン1億総活躍プラン」で、毎年3%程度の引き上げと、最低賃金の全国平均1000円の実現を明記。こうした方針は、経済財政運営の基本指針である「骨太の方針」にも反映され、4年連続の「3%程度」アップにつながった。
政府が引き上げへの取り組みを強めるのは、個人消費の喚起には最低賃金の引き上げが欠かせないと考えているからだ。個人消費は国内総生産(GDP)の半分以上を占め、その活性化は経済の好循環の実現に不可欠だ。
また、日本の最低賃金の水準は他の先進諸国と比べても低い。労働政策研究・研修機構の資料によると、日本の水準は18年で英仏独などの6~7割程度にとどまる。
最低賃金の増額や、それに伴う賃金全体の水準向上は、国民の可処分所得の増加、個人消費の伸長につながる。こうした点からも、政府は最低賃金の引き上げに今後も取り組む方針だ。
中小企業への影響懸念
生産性向上など支援を強化
最低賃金の引き上げを巡っては課題も少なくない。
特に大きいのは、人件費の増加が中小企業の経営を圧迫するとの懸念だ。
実際、日本商工会議所は5月、最低賃金に関する緊急要望を発表し、景況感や経済情勢、中小企業の経営実態を考慮せず3%をさらに上回る目標を設定することに強く反対した。
その理由として、最低賃金の引き上げが続いたことで、「直接的な影響を受けた中小企業が年々増加し、直近では約4割に上る」などと指摘。中小企業・小規模事業者は7年間で63万者も減少している現状を踏まえ、大幅な引き上げが地域経済の衰退に拍車を掛けると訴えた。
また、18年に16.4%、19年に10.9%の大胆な引き上げを行った韓国では、経営体力の弱い事業者が人件費の負担増に耐え切れず従業員を解雇し、失業率の悪化を招いた。
こうした点を踏まえ、厚労省は、生産性向上への設備投資とともに賃上げを行った中小企業・小規模事業者に対し、設備投資費用の一部を助成するなどの支援策を実施。中小企業・小規模事業者のさまざまな課題に対応するため、ワンストップ相談窓口「働き方改革推進支援センター」を全都道府県に開設している。
公明、賃上げ環境の整備訴え
最低賃金の引き上げについて公明党は、中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境整備も含めて推進してきた。
特に今年は、党学生局が6月に政府に対し政策提言を行い、着実な引き上げに努めるよう要請。7月の参院選の政策集(マニフェスト2019)でも引き上げを訴えた。さらに今月7日には、党厚労部会が申し入れた20年度予算概算要求に向けた重点政策提言で、「より早期に全国加重平均を1000円に」と求めるとともに、引き上げに備えた中小企業・小規模事業者への支援強化を要望した。
最低賃金
最低賃金法に基づき、企業などの使用者が労働者に支払わなければならない最低限の時給。労使の代表者と有識者で構成する厚労省の中央審議会が、所得や物価などを基に都道府県をA~Dの4ランクに分類し、ランクごとに改定額の目安を作成。これを受け、各都道府県が具体的な水準を決め、10月ごろから適用する。










