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高校中退者を切れ目なく支援
学業不振や人間関係の悩みなどを理由に、高校を中退する人は年間5万人前後に上る。進路が定まらないまま中退した若者が、社会から孤立し、ひきこもりや生活困窮状態に陥るケースは少なくない。中退後の“切れ目のない支援”として、学び直しに取り組む群馬県や、学校と支援機関が情報共有する高知県の事例を紹介する。
学び直しへ無料学習会
高卒認定試験の合格者も
群馬県
8月中旬の土曜日。群馬県青少年会館(前橋市)の一室では、高校を中退した若者らを対象にした無料の学習会が開かれていた。数学の問題を解く参加者の横には、講師役のスタッフが座り、分からない問題の解き方などを、その都度、優しく教えている。
この学習会は、文部科学省のモデル事業として、群馬県が2017年度から取り組んでいるもの。運営は、ボランティアの養成など行う県青少年育成事業団に委託し、県内4カ所で、それぞれ月1~4回開催している。講師役のスタッフは、教員をめざす大学院生や学生、教員OBが担う。このほか、事業の一環で、県青少年会館では電話や面談で勉強に関する相談も受け付けている。
高校中退者は、その後の就職など進路を決める際、不利な立場に置かれやすい。また、キャリアアップをめざし、高校卒業程度の学力があることを認定してもらう「高校卒業程度認定試験」に挑戦する場合でも、その勉強方法が分からず、諦める人もおり、学習支援が重要となる。
金子勉・学習相談員は「中退した若者は、さまざまな悩みや孤立感を抱えている。この事業は学び直しだけでなく、安心できる居場所づくりとしても役立っている」と意義を強調する。
県生涯学習課によれば、昨年度に学習会を利用した人は14人で、このうち5人が高卒認定試験に合格(一部科目合格を含む)した。
同課の村上みさお係長は「一人一人の若者の将来の可能性を開いていく上で大事な事業。今後も何らかの形で継続していきたい」と話す。
文科省は今年度、群馬県のほか、愛知県や札幌市など全国4カ所でモデル事業を実施。今後、その研究成果の全国展開を図る方針だ。
学校とサポステが連携
情報共有、就労へ後押し
高知県
高知県は、進路未決定のまま高校を中退した人の個人情報を、県内の若者サポートステーション(サポステ)に提供する仕組みとして「若者はばたけネット」を構築。2010年度から運用している。
具体的には、生徒が県立高校を中退した場合、県個人情報保護条例に基づく例外的取り扱いとして、本人の同意がなくても、学校は県生涯学習課を通してサポステに個人情報を伝達。それを基に、サポステは学校側に聞き取り調査をしながら、本人・保護者に電話や家庭訪問などを実施する。本人の意思が確認できれば、サポステから就労支援や学習支援が始まる。なお、私立高校に通う生徒の場合、本人の同意を得た上で、サポステと個人情報を共有する。
狙いについて、県生涯学習課は「中退者の情報を持っているのは学校だが、それ以外の機関には情報が届かず、支援が途切れがちだった。情報を共有することで、積極的な支援ができる」と話す。
若者はばたけネットにより、円滑な支援に結び付くケースは多く、例えば、高校1年生で中退した男性が、サポステから職業体験などの就労支援を受け、2カ月後にはバイト先が決定。学習支援も同時に受けた結果、その後、高卒認定試験に合格したケースもあったという。
公明が取り組み推進
政府の教育再生実行会議が5月17日にまとめた第11次提言は、高校中退の未然防止とともに、中退後も再就学や進学、就労につなげられるよう、在学中からの切れ目のない支援を行うよう求めている。
公明党も、教育改革推進本部(本部長=富田茂之衆院議員)が、これに先立つ同15日に行った政府への申し入れで、高校中退者への支援などを強調。党文部科学部会(部会長=鰐淵洋子衆院議員)が今月9日に文科省へ行った来年度予算概算要求に向けた政策提言でも、支援策を強く求めている。