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【主張】勤務医の長時間労働 健康を守る働き方が必要だ
厚生労働省が大学病院などで働く約14万人の医師(勤務医)について、労働状況の実態調査に乗り出す。調査は診療や学生への教育指導などの時間数のほか、仕事と育児の両立支援策の有無なども回答してもらう。
こうした調査を行うのは、勤務医の労働状況が深刻化しているからだ。
政府はこれまで、その改善策の第1弾として、残業時間の制限を打ち出している。具体的には、2024年度から勤務医の残業時間の上限を原則年960時間に、地域医療の維持にどうしても欠かせない一部の病院の勤務医については、例外として年1860時間まで上限を認めた。
ただ、いずれの残業制限も「過労死ライン」といわれる健康に害を及ぼす残業時間を超えており、負担の一層の軽減が課題だった。
今回の調査結果は、勤務医の労働状況のさらなる改善に向けた第2弾となる法整備を進める上で、重要な資料となろう。国民の生命と健康を預かる勤務医の働き方の実情が、一段と明らかになることを期待したい。
次の取り組みとして、例えば初診時の予備的な問診や入院時の説明など、医師以外でも担うことができる業務の効率化を進め、医師の体力的な負担を軽減すべきである。
そして、勤務医側の要望が強い病院の労務管理体制の整備にも取り組んでほしい。特に、勤務医には宿直業務が義務付けられているが、スマートフォンのビデオ通話機能を使い、いつでも対応可能な環境を設けることで残業を減らす工夫もできるだろう。
医師は昼夜を問わず患者への対応が求められ、特に20代、30代の若手勤務医は他の職業と比較して労働時間が長く、精神的に追い詰められるケースが絶えない。さらに、疲労によって医療事故の寸前に至る経験(ヒヤリ・ハット)をしたことのある勤務医は約8割に上る。
最近明らかになったように、大学病院で診療に携わっているにもかかわらず、無給で働く医師の存在も本人の苦労を軽視した深刻な問題であり、抜本的な対策が必要だ。
医師の健康を確保し、やる気を高めるための働き方改革を進めていかねばならない。