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25年度、与党税制改正大綱のポイント
自民、公明の与党両党は20日、2025年度税制改正大綱を決定した。ポイントを紹介する。
■(高校生年代の扶養控除)負担増回避へ水準維持
今年10月分からの児童手当拡充に伴って廃止や縮減が取り沙汰されていた高校生年代(16~18歳)の扶養控除については、現行水準を維持する。
児童手当の拡充で、せっかく収入がアップしても、扶養控除の廃止・縮減によって課税所得が増え、納税額も増えるという事態が回避される。
昨年末に行われた与党税制協議では、高校生年代の扶養控除見直しが提起されたが、公明党が「少子化対策として子育て支援を進める中、控除縮小を決めるべきではない」と主張し、24年度税制改正大綱では最終的な決定が見送られていた。
今回の税制協議でも公明党は、物価高に加え、高校生の教育関連費が年々高くなっている現状を踏まえ、あらためて扶養控除は縮減するべきではないと主張していた。
■(子育て世帯支援)生命保険料など控除拡充
子育て世帯への税制面での支援が強化される。「生命保険料控除」では、23歳未満を扶養する子育て世帯を対象に、所得税の控除額を拡充。新生命保険料に係る一般生命保険料控除について、現行4万円の適用限度額に2万円を上乗せする。
住宅ローン減税のうち、子育て世帯向けの優遇措置を1年延長。22、23年入居分では、新築の長期優良住宅の借入限度額は5000万円、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」基準の住宅は4500万円だった。24年入居分からそれぞれ引き下げられたが、子育て世帯は1年間に限り額が据え置かれていた。子育て世帯対象のリフォーム減税も1年延長する。
親や祖父母が子や孫に対し、結婚や出産、子育てのための資金を一括贈与する場合に贈与税を非課税とする特例措置を2年延長する。子や孫名義で開設した金融機関の口座に資金を一括して預ける場合、最大1000万円まで贈与税を非課税とする。
■(所得アップへ)「103万円の壁」引上げ/バイト学生「特別控除」新設
所得税が課される年収の最低ラインである「103万円の壁」の見直しについて、123万円への引き上げを明記した。25年分の所得から適用となる。
基礎控除(48万円)を58万円、給与所得控除(最低55万円)を最低65万円にそれぞれ10万円上乗せする。
住民税は26年度分から適用。基礎控除(43万円)は据え置き、給与所得控除は所得税と同様に引き上げる。
大学生年代(19~22歳)の子どもを持つ親の税負担を軽減する「特定扶養控除」は、25年分からアルバイトなどをする子どもの年収上限を現行の103万円から150万円に引き上げる。
子の年収が123万円を超えた分からは、新設する「特定親族特別控除(仮称)」という枠組みとし、150万円を超えると、控除額を段階的に減らす仕組みにする。
■(年金)
高齢化社会における国民の資産形成を後押しする観点から、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の掛け金の限度額を引き上げる。企業年金に加入する会社員は、イデコと年金の掛け金合計額を現在の月5万5000円から6万2000円に上げるとともに、イデコ自体の掛け金上限2万円を撤廃する。
■(中小企業)
成長意欲の高い中小企業の設備投資促進へ、中小企業経営強化税制を拡充し、対象設備に建物を加える。中小企業の800万円までの所得に適用される軽減税率の特例は適用期限を2年延長。
相続税・贈与税の実質負担をゼロとする事業承継税制は、特例措置を適用する際の後継者に関する要件を緩和する。後継者に経営などの経験があれば、役員の就任時期に関係なく特例の対象となるよう変更する。
■(スタートアップ)
スタートアップ(新興企業)などに投資する個人投資家への優遇措置である「エンジェル税制」を拡充する。同税制はベンチャーに投資して得た株式売却益を、再びベンチャー投資に回せば一定額を非課税とする仕組み。これまで同一年内の投資のみを減税措置の対象としていたが、期間を翌年まで延ばし、投資額分を売却益から控除する。
■(訪日客免税)
インバウンド(訪日客)を対象とした消費税の免税制度を見直す。現在は免税店が消費税を抜いた価格で販売しているが、各店舗が税込み価格で販売した上で、出国時に免税額を返金する方式に変更する。26年中の運用開始をめざす。
■(防衛費)
防衛力強化に向けた財源確保では、法人税とたばこ税は26年4月から実施する方針を決めたものの、所得税の開始時期決定は先送りした。
法人税は26年4月から防衛特別法人税(仮称)を新設。法人税額から500万円を引いた額に税率4%を付加する。たばこ税は26年4月から加熱式たばこの税率を引き上げ、紙巻きたばことの税負担の差を解消。さらに、たばこ全体の税率を27年4月、28年4月、29年4月の3段階で1本当たり0.5円ずつ上げる。