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【主張】対人地雷のない世界 国際社会は諦めずに実現すべき
対人地雷の生産や貯蔵、使用などを包括的に禁止する対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)には、日本など164カ国が締約国になっている。同条約の履行状況を見直す5年に1度の再検討会議が11月25日から同29日まで、カンボジアのシエムレアプで開かれた。
注目すべきは、世界で毎週数百人の一般市民が対人地雷を踏むなどして死傷している現状に終止符を打つと表明した政治宣言と、2025年から29年までの5年間で「対人地雷のない世界」を実現する行動計画が今回の会議で採択されたことだ。国際社会は揺るぎない決意で、この目標を達成しなければならない。
一方、そもそも、対人地雷のない世界の実現という目標の達成期限を「25年まで」とする行動計画が、前回19年の再検討会議で採択されていた。
この当時、対人地雷を使用していた国はオタワ条約に参加していないミャンマーのみで、米国やイスラエルといった同条約の非締約国も対人地雷の生産を停止するなどしており、対人地雷のない世界の実現に向けた国際的な機運があった。
だが、オタワ条約の非締約国のロシアが22年2月にウクライナへの侵略を開始してから状況は一変し、現在、ロシア軍はウクライナで大量の対人地雷を使用している。同条約の締約国であるウクライナもロシア軍の侵攻を食い止めるため、対人地雷を使っている。米政府は11月20日、ウクライナに対人地雷を供与することを明らかにした。
また、ロシアと国境を接するフィンランドもオタワ条約の締約国だが、対人地雷を防衛兵器として再導入すべきか検討している。
そうした中、各国が想起すべきは、対人地雷の犠牲者のほとんどが軍人ではなく民間人だということだ。昨年の世界の対人地雷による死傷者は5757人で、そのうちの実に84%を民間人が占めている。このような犠牲をもたらす対人地雷は使用されてはならないという国際世論を盛り上げ、対人地雷のない世界の実現を諦めずに追求すべきだ。