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コラム「北斗七星」
「想像力は人間にしかない」。JT生命誌研究館の中村桂子名誉館長は著書『人類はどこで間違えたのか』(中公新書ラクレ)にそう記している。その能力をどう生かすか。そこに人の真価が現れる◆「人生は基本、自己責任じゃないかな。だから社会保障は必要最低限で構わないと思うよ」。先日、通りすがりにそんな声を耳にした。声の主は20代前半の青年。どうやら友人に持論を語っていたらしい。「自分が社会保障なしでは生活できない立場だったら」。そんな想像をしたことは恐らくないのだろう◆今の彼は何不自由ないのかもしれない。だが、この先はどうか。交通事故に遭ったり、職を失ったりするかもしれない。がんを患うかもしれないし、介護を受ける身になるかもしれない。それは決して人ごとではないと想像に難くない◆人生100年時代。誰しも人の助けが必要になるときは必ずある。生まれてから死ぬまで全てを自己責任では通せない。だからこそ誰もが安心して暮らせる社会保障が不可欠なのだ◆何げなく考えた。けがや病気、失業、介護といった問題を国民の自己責任に転嫁するような政治家が、もし権力を手にしたとしたら……。想像してゾッとした。(佳)