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第50回衆院選 結果分析
公明、24議席で再出発を期す
第50回衆院選は、連立を組む自民党派閥の政治資金問題によって政治不信が広がる中で実施され、公明党は政治改革を訴えきったものの公示前32議席から24議席に後退。自民党も大幅な議席減で与党として過半数(233)に18議席届かなかった。立憲民主党と国民民主党が大きく議席を伸ばした。今回の選挙結果を分析する。
■4小選挙区で接戦制す
北海道、埼玉、愛知、大阪は惜敗
今回の衆院選は小選挙区を「10増10減」して行われた。公明党は11の小選挙区で公認候補を擁立。4人が激戦を突破したが、7人が惜敗した。
新たな区割りとなった小選挙区のうち、東京29区では、岡本三成氏が立憲民主党との“一騎打ち”に勝利。立憲の比例復活を阻止した。広島3区では、国土交通相の斉藤鉄夫氏が立憲との接戦を制して議席を守った。
兵庫2区の赤羽一嘉氏は日本維新の会と立憲の猛追を退け、当選を果たした。同8区の中野洋昌氏も維新に競り勝ち、議席を死守した。
一方、北海道10区の稲津久氏、小選挙区に初めて挑戦した埼玉14区の石井啓一代表、衆院選初挑戦となった愛知16区の犬飼明佳氏は、いずれも最後まで追い上げたが、善戦及ばず惜敗した。
また、大阪の四つの小選挙区で公明党は、維新と初の全面対決に。大阪3区の佐藤茂樹副代表、同5区の国重徹氏、同6区の伊佐進一氏、同16区の山本香苗氏は死力を尽くしたが、惜しくも敗れた。
11小選挙区のうち、前回と比較可能な7小選挙区で、公明党は当落にかかわらず得票を減らしており、与党への逆風の強さをうかがわせた。
■比例選3減の20議席
定数減の東北、北陸信越で死守
比例区で公明党は、全国11ブロック(総定数176)で計20人が当選した。目標の23議席以上には及ばず、公示前から3議席減らした。
総得票数については、投票率が戦後3番目に低い53.84%と前回に比べ2.08ポイント低下する中、公明党は前回比114万9867票減の596万4415票だった。得票率は同1.45ポイント減の10.93%にとどまった。
比例区のブロック別定数は今回、「3増3減」の見直しにより、東京都ブロックで2、南関東ブロックで1増加。東北、北陸信越、中国の3ブロックで1減となった。このうち定数減の東北、北陸信越の両ブロックで公明党は1議席を死守した。また、北海道、北関東、東京都、南関東、近畿、四国の6ブロックも公示前の議席を維持した。
南関東ブロックは3議席目が5万976票届かず次点。北関東ブロックでは、国民民主党の比例名簿登載者が1人不足し、次点の公明党に議席が回る形に。一方、東海、中国、九州・沖縄の3ブロックでは、善戦及ばず1減となった。東海ブロックは3議席目に7万235票足りなかった。
得票率のブロック別トップは九州・沖縄ブロックで14.56%。都道府県別の上位10県は沖縄県(16.92%)、長崎県(15.41%)、福岡県(15.10%)、和歌山県(15.04%)、宮崎県(14.63%)、高知県(14.44%)、徳島県(14.32%)、大分県(14.09%)、熊本県(14.06%)、鳥取県(13.03%)となった。
得票率の前回比では与党に逆風が吹く中、大分県が14.087%から14.092%に上昇、全国で唯一前回を上回った。
■与党で過半数割れ
自民の「政治とカネ」逆風に
自公連立政権に国民の厳しい審判が下された。
今回の衆院選で自民、公明両党は定数465に対して合計215議席にとどまり、過半数(233議席)を下回った。与党の過半数割れは、2009年衆院選以来だ。
とりわけ自民党の退潮は著しい。公示前から65議席減の191議席で、1955年の結党以来2番目に少ない議席数となった。
衆院選に当たって自民党は、派閥の政治資金問題に関わった前議員ら10人を非公認、34人は比例選との重複立候補を認めなかった。しかし選挙戦終盤、非公認候補が代表を務める政党支部に党本部が2000万円を支給していたことが発覚、国民の批判にさらされた。
石破茂首相(自民党総裁)は、「国民の疑念、不信、怒りが払拭されていない」と述べ「政治とカネ」を巡る同党の取り組みの不十分さを敗因に挙げた。
公明党は、政治資金規正法を改正し規制を強化するなど改革をリードしてきたものの、逆風のあおりを受け、公示前から8議席減の24議席に後退。「公明逆風『もらい事故』」(28日付「毎日」)などと報じられた。
選挙結果を受けて公明党の石井啓一代表は、自民党の2000万円を巡る問題について「非常に大きなダメージになった」との認識を示した。
■立憲、国民が大幅増
維新、共産は公示前下回る
立憲民主党と国民民主党が大幅に議席を増やし、政権批判票の受け皿となった。
立憲は公示前の98議席の1.5倍となる148議席に。小選挙区では新潟県と佐賀県で議席を独占した。ただ、立憲の比例票は前回より7万票の微増にとどまり、同党の二つの目標のうち「自公過半数割れ」は達成したが、「比較第1党」には届かなかった。「『敵失』で議席を伸ばした面が大きく、自らの政策・主張が全面的に支持を集めたという過信は禁物」(28日付「読売」)と指摘されている。
国民は公示前の7議席から4倍の28議席を獲得した。要因の一つとして29日付の朝日新聞は、比例区で「特に若年層の支持を集めていた」と分析。同紙の調査によると、比例区の投票先は20代では国民が26%と自民党の20%を上回り「比例第1党」となった。30代でも21%で自民と並んだ。
日本維新の会は公示前の43議席から38議席に減少。大阪の全19選挙区で勝利したものの、関西以外で議席を得たのは広島4区と福岡11区のみで、悲願の「全国政党化」はかなわなかった。
共産党は公示前の10議席から8議席に後退。衆院選の獲得議席が1桁にとどまるのは2012年以来。「しんぶん赤旗」で自民党派閥の政治資金問題を報じたほか、自民党本部が非公認となった候補側に2000万円の活動費を支出したことも報道したが、「政権批判票の受け皿になったのは、立憲民主党や国民民主党など他の野党」(29日付「朝日」)で議席増につながらなかった。
このほか、れいわは9議席、参政党は3議席と、いずれも公示前の3倍に。衆院選初挑戦の日本保守党は3議席を獲得し、社民党は1議席を維持した。