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【主張】東南アジアの脱炭素 日本の技術力を生かし貢献を
東南アジアは石炭や天然ガスといった化石燃料による発電に頼る国が多く、経済成長に伴う電力需要の増加と二酸化炭素(CO2)の排出削減との両立が課題になっている。気候変動への対応は“待ったなし”であり、脱炭素化に向けた協力を推進することが重要である。
今月11日に開かれた、日本と東南アジア諸国などとの新たな連携枠組み「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」首脳会合では、今後10年を見据えた脱炭素化のための行動計画がまとまった。
AZECは日本のほか、ミャンマーを除く東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する9カ国とオーストラリアで構成。日本が官民一体で資金や技術面を支援し、各国の気候変動対策やエネルギー移行の促進に取り組む。
今回の行動計画では、サプライチェーン(供給網)全体の温室効果ガス排出量の可視化を柱に掲げた。AZEC内で脱炭素を促すルールを形成し、企業の排出削減への努力が評価される環境をつくる。具体的には、水素やアンモニアなど日本の関連技術を生かして、排出量の多い電力や運輸などの分野で取り組みを加速させるのが狙いだ。
深刻化する気候変動を背景に、世界は2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)をめざした取り組みが進む。ASEANの多くの国も50~65年での実現を掲げている。だが、CO2の排出量が多い火力発電への依存度が高いままでは達成は困難だ。電力需要は50年までに3倍近くに増加する見通しで、世界全体の脱炭素のためにも東南アジアでの排出削減が急がれる。この点、技術や経験が豊富な日本が主導するAZECの意義は大きい。
AZECは、脱炭素技術の普及による排出削減とともに、新たな市場を生み出すことで関連企業にとっても収益機会の拡大が期待される。日本は磨いてきた技術やノウハウで支援を進め、世界の脱炭素につなげていくべきだ。