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「核なき世界」めざして
「被爆の実相」世界に発信
広島、長崎へ要人が訪問 政府とNGOを橋渡し
2020年NPT会議 日本が合意形成促せ
設立10年の党核廃絶推進委員会 浜田昌良座長(参院議員)に聞く
今年で設立10年の節目を迎える公明党核廃絶推進委員会。広島、長崎の「原爆の日」を前に、同委員会の設立時から座長を務めている浜田昌良参院議員に、「核兵器のない世界」の実現に向けた取り組みなどについて聞いた。
――2009年12月に核廃絶推進委員会を設置した背景は。
浜田昌良座長 当時は2010年の核拡散防止条約(NPT)運用再検討会議の直前だった。同会議は5年に1度、核不拡散に関する問題を議論するが、05年の会議は最終文書を採択せず決裂。NGO(非政府組織)関係者から10年は成功させたいと、協力要請があった。
NGO(右側)を交えて活発に議論する党核廃絶推進委員会と青年委員会の合同会議=7月29日 参院議員会館
また、09年8月の衆院選で野党に転じ、もう一度、公明党らしさを見つめ直している時でもあった。新しい党のビジョンでも「平和」は重要な位置を占めた。そこで、長いスパンで継続的に核廃絶を議論し、NGOと政府を橋渡しする、対決型・対立型ではないプラットフォーム(共通基盤)として委員会は設置された。
――どんな視点で取り組んできたのか。
浜田 核廃絶を本当に実現しようとする時、核廃絶という「理想」と安全保障(核抑止)という「現実」のギャップを埋める必要がある。このギャップを埋め、イデオロギー(政治的立場)を乗り越えるには、「被爆の実相」や「非人道性への共感」を基盤にして近寄る必要があるとの方針で取り組んできた。
まずは「被爆の実相」を知ってもらうことが重要だと外務省に訴え続けた。同省もこれに対応し、世界の首脳が集う会合を被爆地で開くなどして、ついに16年にはオバマ米大統領の広島訪問が実現した。そのほかにも各国要人が被爆地を訪れたり、国際会議に被爆者の代表が出席するなど、被爆の実相を広く世界に伝える取り組みが大きく前進した。
――今後の取り組みについては。
浜田 17年に国連で採択された核兵器禁止条約の交渉過程で、核兵器保有国と非保有国の溝は深まった。核禁条約は、国際的に核兵器を禁止する規範を確立しようとする画期的な一歩であり、公明党も大局的な視野から評価しているが、核軍縮を具体的に進めるためには、もう一度、両陣営の橋渡しをしないといけない。
橋渡しの一つの手段として、核保有国と非保有国双方の有識者を日本に招き、核軍縮の進め方を議論する外務省主催の「賢人会議」が創設された。同会議は、公明党の提案で被爆地の広島市と長崎市でも会合を重ね、9月には、これまでの議論をまとめた報告書を外務省に提出する。さらに後継組織として有識者とNGO、そして関係国の政府関係者が議論する「1.5トラック」会合を外務省が開く。これらを通じ、日本が来年のNPT運用再検討会議で核軍縮に関する合意形成を進める役目を果たしていくべきだ。
――党は核廃絶にどう取り組むか。
浜田 冷戦後の核軍縮の支柱であった米ロの「中距離核戦力(INF)全廃条約」が2日に失効した。このように、核廃絶を取り巻く現実は厳しくなってきている。
新たな軍拡競争への懸念も広がる中だが、それでも日本は唯一の戦争被爆国として、国際社会に対して核廃絶を訴える権利と責務がある。日本が核保有国と非保有国の真の橋渡し役となるよう、公明党が与党として支え続けたい。さらに政党外交などを通じて、国際社会に核廃絶を訴え続けていく。