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2019年7月27日

若いがん患者に子を持つ希望を

治療の影響で不妊の恐れ 
卵子・精子凍結保存に望み

がん治療と出産までの流れ

子どもや若い世代のがん患者は、抗がん剤や放射線治療を受ける過程で生殖機能が影響を受け、将来、不妊になる恐れがある。子どもを望む患者のため、がん治療前に卵子や精子などを凍結保存することで妊娠する可能性を残す妊孕性温存治療があるが、課題は少なくない。

「子どもを持てる可能性がなくなるのなら、骨髄移植を断ろうと思い詰めていた」。こう話すのは、四国地方に住む塩野健太さん(41)=仮名=だ。塩野さんは20代で血液がんの白血病を発症。治療法は骨髄移植しかなかったが、副作用を調べる中で、子どもがつくれなくなる恐れがあることを知り、ためらっていた。

その時、看護師だった母親から、妊孕性温存治療があることを聞き、塩野さんは、精子を凍結保存した後、骨髄移植を受けた。

白血病の完治後、彼女に子どもをつくれない事情を理解してもらった上で結婚。凍結した精子による体外受精で、待望の子どもを授かることができた。「温存治療のおかげで、治った後の人生を前向きに考えられ、希望になった」と話す。

温存治療で子どもを持つ望みを闘病の支えにする、若いがん患者は多い。こうした中、小児・AYA世代(思春期・若年成人世代)の支援として温存治療が注目されている。

日本癌治療学会は2017年7月、妊孕性温存に関する初の診療ガイドラインを策定。がん治療を最優先にしながら、患者に不妊の可能性を伝え、希望すれば、温存治療を行う生殖医療の専門医を紹介するよう求めている。

情報提供が重要

しかし、現状では医療機関や医師によって対応に温度差がある。また、がん宣告の直後で患者が動揺している中で、温存治療に関する説明を受けても、記憶に残らない恐れがある。患者に寄り添った情報提供が求められている。

高額の費用負担が課題

自治体の主な支援例

妊孕性温存治療は、公的医療保険の対象外で、費用は自己負担となる。

NPO法人・全国骨髄バンク推進連絡協議会によれば、卵子の採取・凍結には15~45万円、精子が2~7万円程度かかるとされる。その後の凍結保存にも毎年1~6万円程度かかるという。

若い患者ほど収入は少ない上、仕事と治療の両立が難しく、退職を余儀なくされる人もいる。このため経済的負担の重さが、温存治療をあきらめてしまう一因ともなっている。

負担を軽減するため、国の不妊治療費の助成制度も、温存治療の一部に適用できるが、未婚の患者は利用できない。

一部の自治体では独自助成

そこで、一部の自治体では独自の助成制度を設けている。例えば埼玉県では、18年度から、卵子や卵巣組織の採取・凍結などに最大25万円を助成する制度を創設した。患者に前向きに温存治療を受けてもらうため、体調不良などで、やむなく治療を中断した場合でも助成対象とした。

県疾病対策課によれば、18年度20件の申請があり、患者の家族から「助成があって、ありがたい」と感謝の声が寄せられているという。

民間でも支援の動きが広がっている。全国骨髄バンク推進連絡協議会は、卵子凍結などに5万円、精子凍結などに2万円の助成を行っている。

資金を確保するため、今年4月から2カ月間、インターネット上で寄付を募るクラウドファンディングを実施したところ、約1380万円を集めることができた。秋以降の助成に充てる方針だ。

同協議会の大谷貴子顧問は「自治体や民間で助成が広がっている。国も支援強化に取り組んでほしい」と話す。

公明、参院選政策集で支援明記

国は、小児やAYA世代のがん患者の支援の一環として、科学研究費助成事業を通し、正しい医学的情報の提供や適切な医療を提供する体制整備などに力を入れている。

公明党も6月に発表した参院選政策集(マニフェスト)で、若い夫婦が妊孕性温存治療を選択できるよう支援することを明記。今後、支援策を党内で検討していく方針だ。

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