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2024年10月5日

女性の健康課題 解決へ

「総合センター」オープン 
センター長 小宮ひろみ氏に聞く

生理や不妊、更年期障害など、女性は人生の各段階でさまざまな健康課題に直面する。全ての女性が生涯にわたり健やかに暮らせるよう、政府は今月1日、女性の健康に関する研究・診療の司令塔機能を担う「女性の健康総合センター」(小宮ひろみセンター長)を国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)内に開設した。設置背景や機能について、小宮センター長に話を聞いた。

創設の背景
性差意識した医療必要
男女で症状や治療が異なる

こみや・ひろみ 1986年、山形大学医学部卒業。2008年、福島県立医科大学附属病院性差医療センター部長。17年~今年3月、同センター教授。今月より現職。専門は生殖内分泌、性差医療、漢方医療、女性ヘルスケア。

――女性の健康総合センター設置の背景は。

小宮ひろみセンター長 年齢に応じてホルモンバランスが大きく変化する女性は、妊娠・出産などの女性特有の健康課題や、男女で症状や特徴が異なる病気に悩むことになる。女性が健康に暮らすには、こうした女性ならではのライフステージや性差に着目した医療の充実が欠かせない。

これまでも女性外来や性差医療センターは各地に設置されていたが、包括的な研究拠点が存在していなかったため、研究や臨床に関するデータが散在してしまい、十分に活用されてこなかった。

――健康課題の具体例は。

小宮 女性特有の課題としては、子宮内膜症や卵巣腫瘍といった生殖器の疾患、月経困難症や月経前症候群などの月経関連症状、そして妊娠・出産が挙げられる。

一方で、男女ともに罹患するが、症状が異なる疾患も多く存在する。

例えば、悪玉コレステロールや中性脂肪が多くなる「脂質異常症」もその一つだ。閉経後の女性は男性に比べ、悪玉コレステロールの数値が高くなり、脂質異常症になるリスクが上昇する。

これに関連し、冠動脈が詰まり血液の流れが途絶える心筋梗塞などの「虚血性心疾患」も、女性は閉経後10年たつと罹患率が高くなる。その上、心筋梗塞で病院に運ばれた場合では、男性より女性の院内死亡率が高いとも言われる。

このように男女ともに罹患する疾患で、症状、経過、治療法、予防法について性差を考慮した医学・医療は、これまでほとんど行われてこなかった。男性から得られた研究結果が、そのまま女性に当てはめられていたと言っても過言ではない。このため、各疾患のこれまでの治療や予防が、女性に適切かどうか明らかにしていく必要がある。

役割と機能
データを収集し研究推進/幅広い疾患を扱う診療部門も

女性の健康総合センターの機能

――同センターの役割・機能は。

小宮 女性の心と体の健康を推進するため、多様な機能を担っている。まずは、女性の健康に関するデータセンターの構築だ。自治体や医療機関、企業などと連携してデータを収集・解析して、活用しやすいように可視化する。その上で、政策提言や情報発信につなげて、女性の健康にも役立てていく。

さらに、女性のライフステージと性差を踏まえた研究も推進する。免疫や生殖医学、ライフコース疫学など8種類の研究室を新設し、課題の解決に取り組む。

研究成果の社会実装に向けては、企業などと連携して共同研究・開発を進める「オープンイノベーションセンター」を2026年度中に設立する予定だ。

――診療機能は。

小宮 幅広い診療を提供するため、同センターの診療部門として「女性総合診療センター」を立ち上げた。これは、女性内科、女性外科/婦人科、不妊診療科、女性精神科、女性歯科の五つで構成され、各科の専門医が互いに連携して患者を診ていく。準備中の女性精神科と女性外科以外は、今月1日から診療を開始している。

女性の中には、月経や更年期障害の関係で、どの病院で検査しても異常は見つからないが、目まいや動悸、疲労などの体調不良が生じる患者が少なくない。検査で異常がなくても、実は深刻な病気が隠れているケースもある。女性総合診療センターではこうした点も含め、多様な健康課題に向き合い、患者を中心とした医療を提供していく。

今後の展望
司令塔として国内外と連携

――今後の展望は。

小宮 近年、心身だけでなく、社会的な側面も含めて満たされた状態「ウェルビーイング」が重視されている。これは女性の健康にも通じる考え方だ。病気でない状態を健康と呼ぶのではない。女性が身体、心、社会的に健康になる“女性のウェルビーイング”をめざすことが大切だ。

27年度中には、女性の健康総合センターの建物も完成予定だ。今後、国内外の関係機関と連携しながら、女性の健康の司令塔として貢献していきたい。

――政府や自治体に求めることは。

小宮 今回のセンター開設は、医療機関や政府の関係者の尽力をはじめ、08年から公明党が要望していたことなども後押しとなって実現できた。政府には引き続き、研究基盤の構築や人材育成に必要となる経費の拡充などの支援を求めたい。

地方自治体には、同センターで実施するデータ収集や情報発信、人材育成などへの協力をお願いしたい。全国どの地域に住む女性でも等しく性差医療などの恩恵を受けられるようにしたい。

日本初、国の中心拠点
公明が08年から設置訴え

開所式であいさつする古屋氏(右端)=1日 都内

今月1日、「女性の健康総合センター」の開所式が国立成育医療研究センター内で開かれた。女性の健康について包括的に研究する国の中心拠点は日本初で、公明党が設置を強く推進していた。

開所式では、テープカットや国内外の関係者の祝辞などが行われた。このうち、性差医療などで世界をリードする米国の研究拠点の識者は、ビデオレターを通じて、「女性は男性に比べて平均寿命が長いものの、慢性疾患を抱え生活の質が低下した状態で過ごす期間が長くなる」と指摘し、長寿国である日本に同センターが創設されたことは「重要な一歩」と高く評価した。

公明党は長年、女性の健康支援策をけん引してきた。同センターの創設についても、党女性委員会が08年に政府に対し、女性の健康に関する研究などを担うナショナルセンターの設立を提言していたほか、国会質問でも取り上げるなど一貫して後押ししてきた。

来賓として開所式に出席した公明党の古屋範子副代表は、女性活躍における健康支援の重要性を強調し、「全ての女性の健康づくりのために、センターが大きく成果を上げていくことを期待する」とあいさつした。

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