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【主張】人道支援要員の保護 新宣言採択へ全ての国が参加を
戦時に適用される国際人道法は、傷病者であれば兵士であっても敵味方の区別なく治療を受け、保護されねばならないとしている。さらに生活必需品や食料が不足し、苦しんでいる民間人への援助も求めている。
それ故、国際人道法は戦地で医療活動を行ったり、食料を運んだりする人道支援要員が妨害されることなく、援助を必要とする人のもとに迅速にたどり着けるようにする措置を講じることを紛争当事者に義務付けている。ところが今、人道支援に従事する国連や非政府組織(NGO)の要員の死者が急増している。国際社会はこの現状を看過してはならない。
注目すべきは、日本や英国、スイス、オーストラリア、ブラジル、コロンビア、ヨルダン、インドネシア、シエラレオネの9カ国が9月24日、米ニューヨークの国連本部で共同声明を発表し、人道支援要員の保護に関する閣僚級グループの発足を表明したことだ。9カ国は今後、人道支援要員の保護を強化する新宣言の採択をめざし、この宣言に全ての国が参加するよう働き掛けていくという。
特に、パレスチナ自治区ガザ地区では、イスラエル軍による攻撃で約300人に上る人道支援要員が命を落としている。イスラエル軍が戦火を広げているレバノンでも、イスラエル軍の空爆により、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の職員が死亡した。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は、ウクライナやイエメンなど33カ国で人道支援要員が殺害されたと明らかにしている。
国際人道法を順守し、人道支援要員を守るには、紛争当事者の慎重な判断が不可欠だ。例えば、人道支援要員は援助物資の略奪を防ぐ警護員を雇うのが普通である。しかし、イスラエル軍が銃器の所持を理由に警告なく攻撃し、殺害したのは米国の人道支援団体「アネラ」が雇った警護員だったということがあった。
日本など9カ国が主導する取り組みを機に、人道支援要員を保護する国際的な機運を高めていくべきだ。