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2024年9月24日

公明党2040ビジョン中間取りまとめ(上)

全ての人へ安心もたらす社会に(総論全文) 
党2040ビジョン検討委員会

公明党2040ビジョン検討委員会(委員長=石井啓一幹事長)が20日に発表した「公明党2040ビジョン中間取りまとめ~『創造的福祉社会』の構築へ~」について、総論全文を上下2回にわたり掲載する。=<下>は25日付に掲載予定

全世代型社会保障を踏まえ「創造的福祉社会」の構築へ

○1964年(昭和39年)に結成された公明党は、「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義=中道主義」の理念に立脚し、「大衆福祉」を高らかに掲げて出発しました。その大衆福祉とは、狭義の福祉論とは異なり、全ての人々の幸福を実現するための普遍主義的な社会改革を志向するものでありました。結成大会前年に公明政治連盟(党の前身)の提唱で教科書の無償配布が実現したのをはじめ、児童手当の創設、年金の抜本改革、がんや認知症に関する基本法制の確立など、わが党は60年余にわたって社会保障、子育て支援と教育の改革をリードしてきました。近年、国政の大きな柱となった全世代型社会保障とは、まさにわが党の主張が政治の主流になった証しであると言えます。

○日本は少子高齢化と人口減少により国の存立が揺るがされかねない深刻な局面に入っています。2040年過ぎに高齢者人口はピークに達し、生産年齢人口(15~64歳)が大幅に激減します。一方、地域におけるつながりの衰退は孤独・孤立の問題を深刻化させ、国民の幸福度を押し下げています。国連の「世界幸福度報告」(2024年版)によると、人々のつながりの豊かさを示す社会関係資本の指標とされる「社会的支援」と「寛容さ」において、日本はそれぞれ46位、125位と低迷しており、その改善が課題になっています。40年へ向けて少子化の流れを抑制しつつ、互いの支え合いを基盤にした新しい社会の構築へどのように踏み出すか、これから先はまさに「正念場の15年」となります。

○この重要な時期において、わが党は大衆福祉の原点を再確認するとともに、これまで築き上げてきた全世代型社会保障を基盤として、新たな「創造的福祉社会」の構築に挑みます。創造的福祉社会とは、少子高齢化、人口減少の時代の諸課題に対処する制度改革だけではなく、「人々のつながりと支え合いを幾重にも創り上げ、全ての人の尊厳を守るとともに、それぞれの自己実現に最適な環境を提供できる社会」であります。

○創造的福祉社会をめざす個別具体的な制度の構築に際しては、医療や介護、福祉、教育など人間が生きていく上で不可欠な公的サービスに関して、所得や資産の多寡にかかわらず、誰もが平等にかつ必要な時にアクセスできる権利の保障をめざす、いわゆるベーシック・サービスの考え方を踏まえて取り組みます。公的サービスの給付に関しては所得制限などの受給条件を可能な限りなくし、その負担を能力に応じて社会全体で分かち合います。

○こうした制度改革を通じて「弱者を助ける社会」から「弱者を生まない社会」への転換を促し、助けを必要とする人々の尊厳を守りつつ、「社会的分断」を防ぎます。全ての人に安心をもたらす社会保障改革で国民の連帯感を強化し、将来不安や「生きづらさ」の解消を図ります。

○上記の考え方に立脚し、教育・子育て支援については、子どものいる世帯だけではなく社会全体でその負担を分かち合うことによって、全ての子どもたちへ平等に教育の機会を提供し、給付の有無による分断を防ぎます。子育て世帯の先行き不安を解消できれば、分厚い中間層の形成にもつながり社会の安定性と活力が増します。

○加えて重視したいことは、われわれの暮らしや生命を支えているエッセンシャルワーカーへの支援、特に医療、介護、福祉、保育、教育に携わる人々への支援と負担の軽減とソーシャルワークの充実です。2020年からのコロナ禍では、エッセンシャルワーカーの献身的な働きで辛うじて医療や介護の崩壊を食い止めることができましたが、構造的な人手不足が深刻化するのはこれからです。また、地域の福祉課題が複合化・複雑化する中、こうした課題へ対応するソーシャルワークの重要性は高まっています。専門分野の「担い手」への支援を手厚くするとともに、人材確保が困難な人口縮減社会にあっては、地域のつながりを維持・再生するソーシャルワーク、地域住民の相互理解と互助こそが人間の尊厳を守り、各種制度を円滑に機能させる生命線となります。

○正念場の15年では家族形態の変化を踏まえて単身世帯に力点を置いた社会改革に全力で取り組まなければなりません。高齢期の見守りだけではなく、青年期から中年期、高齢期、晩年期へと単身者が多様なつながりを形成し、生きがいを持って暮らせるよう、包摂的な地域社会の構築が強く求められています。さらに「住まい」の確保は人間の生存と尊厳にかかわる重要な基盤であることから、これを社会保障の柱の1つに位置付け、単身世帯にも充当できる居住支援政策を検討し、誰もが住居に困らない社会をめざします。

少子高齢化、人口減少 日本社会で進む「静かなる危機」

○少子高齢化にまつわる4つの要因が相互に絡み合い、「静かなる危機」が日本社会で進行しています。

○第1に、歯止めのかからない少子化です。2023年の人口動態統計によれば、合計特殊出生率は前年の1.26から1.20に下がり過去最低を更新。2000年に119万人台だった出生数は16年に100万人の大台を割り、23年には72万7288人へと急減しています。この流れを急激に反転させることは困難ですが、抑制するための手立てを今、講じなければ、一気に出生数が激減する恐れがあります。

○第2に、単身世帯の急増。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)によると、「夫婦と子ども」世帯が一般世帯に占める割合は1995年の34.2%から、2020年には25.2%へと激減。この間に単身世帯の割合は25.6%から38.0%に急増しました。2025年以降、単身世帯が一般世帯の4割を超え、50年には44.3%に達します。医療・介護の必要性が高まる75歳以上の単身世帯は2040年に610万世帯となる見込みです。

○第3に、深刻な人手不足です。社人研推計では2020年から2040年に高齢者人口が326万人増え、ほぼピークに達する一方で、生産年齢人口は1295万人も減少する見込みで、経済的な先行き不安の要因にもなっています。既に人手不足は、さまざまな業種で顕在化し始めており、特に医療、介護、福祉など命を守る専門職人材の育成・確保へ総力を挙げなければなりません。

○第4に、自治体や地域共同体の存続不安です。今年実施した党の自治体アンケートでは、回答した1304市区町村のうち3割超が人口減少のために自治体としての存続が危うくなるとの危機感を表明。医療の施設・人材が不足するとの懸念を抱いている自治体が8割を超え、介護ではその割合が9割にも達しています。さらに、存続危機感を抱いている自治体の約7割で外国人材が不足するとの見通しが示されました。

○上記の要因が複合的に絡み合い、国民に将来不安や「生きづらさ」をもたらしています。こうした現状を転換し、創造的福祉社会への道を切り開くため、公明党は以下に掲げる5つの改革構想に取り組みます。

<改革構想1>教育のための社会・こどもまんなか社会を築く

○教育制度においては、「人づくりは国づくり」であることに立ち戻り、「教育は子どもの幸せのためにある」という理念の下、2040年へ向けて、多様な子どもたちの個々の可能性を開き、誰もが自分らしく強みを発揮して輝くための学校へと公教育を再生し、その「学び」を幸せの方向へ、平和の方向へと生かしていける人間教育に取り組みます。また、若者が経済的な理由で進学等の希望する未来を諦めることがない社会をつくるために、人的・経済的に教育へ貢献することを社会の主流にし「教育のための社会」を定着させます。

○わが党は一貫して「教育は子どもの幸福のためにある」との理念を掲げてきました。文部科学省においても「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」が第4期教育振興基本計画の柱として取り上げられ、個人と社会のウェルビーイング(人としての幸福なあり方)を実現することが教育の目的であることは、現在の日本の教育政策の基本的な考えになっています。「教育は子どもの幸福のためにある」というわが党の理念は、今や社会が教育政策に希求するものとなりました。

○この実現への課題は、個人においては主体的・自律的な人間の育成と、社会においては、これまでの教育観をいかに転換していくかということにあります。これらの課題解決策こそ、公明党のビジョンである「誰もが自分らしく強みを発揮する『輝き教育』へ 公教育の再生」と、教育のために大人や社会が総力を挙げ「教育への貢献を社会の主流」にすることなのであります。

○少子化、人口減少の流れを抑制しつつ新しい社会への道を切り開くため、党「子育て応援トータルプラン」については2030年までに子ども・若者・子育て世代の声に耳を傾けながら、必要な見直しを行いつつ、「こどもまんなか社会」の実現をめざします。教育においては、時代の変化に合わせた政策を加えながら、「公教育の再生」「教育のための社会」を実現します。

○高齢者や女性、障がい者らが自己実現のチャンスを広げ、多様な分野で働き、社会的に活躍できるよう学び直しなど生涯教育やインクルーシブ教育を大幅に拡充します。

○教育と子育て支援、若者支援は、人が生きていく上で最重要のベーシック・サービスであることから、全ての妊婦、子ども、若者、子育て世帯が給付を含むあらゆる支援を公平に受けられるよう、可能な限り所得制限を設けません。その財源に関しては、子どもを社会で育てるとの前提に立って、低所得層に配慮しつつ、全世代、社会全体で負担を分かち合い、安定的な財源を確保できるよう、国民的合意の形成に注力します。

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