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(郷土の歴史と文化)市全体をミュージアムに
山梨・南アルプス市
市文化財課職員の保阪さんから話を聞く市議会公明党の(右から)河野、小池、斉藤の各議員
■(伝承館)「円錐形土偶」など約600点
■(〇博事業)市民からの歴史情報集約
山梨県南アルプス市は、市内の遺跡から出土した土器などを展示する「ふるさと文化伝承館」を5月にリニューアルオープンさせた。2017年度から実施している市全体をミュージアム(博物館)に見立て、市内にある歴史資源を後世に残す取り組み「ふるさと○○博物館(通称・○博)事業」と合わせて、地元の魅力を再発見し、発信しようと力を入れている。
リニューアルオープンした「ふるさと文化伝承館」には連日、市内外問わず多くの人が足を運んでいる。同館では国の重要文化財であり、縄文時代を代表する文物として有名な妊婦を模した「円錐形土偶」(この土偶をモチーフに、ゆるキャラである子宝の女神 ラヴィが創出され人気)をはじめ、市内の遺跡などから出土した約600点の土器や石器などが常設展示されている。
一方、市が同時並行で取り組みを進めている○博事業は、市内に眠る歴史資源を掘り起こし、育み、伝えるプロジェクト。市の文化財課職員が地域住民から話を聞き、市内各地域の歴史を調査し、記録し、資料化を進め、ゆくゆくは今後のまちづくりにつなげていくのが狙いだ。伝承館は○博の発信拠点でもある。
伝承館で現在実施中の江戸時代から昭和時代にかけての「食」に焦点を当てたテーマ展「南アルプスたべもの風物誌」はその一環(内容は随時変更予定)。南アルプス市域は、扇状地が多く保水性も低いため、水田による米作よりも小麦の栽培に適していたことから、小麦粉から作るほうとうやうどんなどに関する調理具が多く展示されている。全て市民からの寄贈品というのも特徴だ。
さらにインターネットを活用し、○博事業の発信力を高めるため「○博アーカイブ」を作成。同アーカイブは、市文化財課が東京大学大学院の研究室との共同研究で開設。「○博アーカイブ」をクリックすると、デジタル地球儀とともに旧石器時代から現代まで、地元で発見された各時代の歴史資源や、その情報を寄せてくれた市民の顔が表示される。見たいものを選択すると、説明文や動画によって当時の様子を知ることができる。有形文化財のみの表示やキーワード検索も可能。誰でも手軽に南アルプス市の歴史を学べるようになっている。
これらの取り組みを担当する市文化財課の保阪太一さんは「市民主体で南アルプス市の良さを多くの人に発信していける取り組みだ。多くの人に注目され、市民の皆さんが市を誇りに思えるきっかけになればありがたい」と語っている。
市議会公明党(河野木綿子代表)は、2015年の12月定例会で斉藤博明議員、17年の3月定例会で小池伸吾議員がそれぞれ、市内に存在する歴史資源や文化資源と人々をつなぎ、市全体をミュージアム(博物館)に見立てる市の「フィールドミュージアム構想」を、まちづくりの根幹となる事業と位置付け、推進していくべきだと訴えてきた。