ニュース
【主張】日中韓の観光交流 相互の信頼関係を深める土台に
コロナ禍で落ち込んだ国民同士の往来を観光で活発化させ、相互の信頼関係を深める土台を築きたい。
日本、中国、韓国の観光交流について議論する観光相会合が11日、神戸市内で開かれた。日本からは斉藤鉄夫国土交通相(公明党)が出席し、3カ国を往来する観光客を2030年までに4000万人に増やすとした共同宣言を採択。まずは来年までにコロナ禍前の3000万人へと回復させる目標を掲げた。
観光を通じた交流は国民同士の理解や信頼を醸成する。歴史的、経済的に深いつながりを持つ隣国の3カ国が、観光交流を一段と加速させ、国民レベルの信頼関係をより強固にする意義は大きい。
共同宣言では、観光交流の迅速な回復とともに、自然や文化の保全と観光利用を両立したコンテンツづくり、地方への誘客促進を通じた旅行先の広域化を進めることで合意した。
また、交通混雑や観光客のマナー違反などのオーバーツーリズム(観光公害)対策や、子連れ、高齢者、障がい者も旅行しやすい環境整備で3カ国が協力することも盛り込まれた。
30年にインバウンド(訪日客)6000万人の目標を掲げる日本では、コロナ禍の収束で訪日客が伸びている半面、中韓を含めたアウトバウンド(日本人の海外旅行客)の回復は円安の影響などで遅れている。日本からの観光客を待ち望む声は少なくない。共同宣言にある地方直行便の増便などを進め、アウトバウンドの増加につなげてほしい。
一方、共同宣言で次世代を担う青少年の交流促進への注力を掲げたことも評価したい。政府間や経済的な交流に加え、青少年が相互理解を深めて友好の根を張ることは、将来の日中韓関係の発展を後押しする。
実際、観光庁が進める若者旅行の支援事業で韓国を訪れた高校生からは「親日の方が多かったので、韓国のイメージが変わった」との声が寄せられている。
観光を軸にした国民レベルの草の根交流を深めていきたい。