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【主張】自衛隊の人材確保 防衛力強化の基盤として重要に
厳しい国際安全保障環境に対応するため、政府は現在、防衛力の抜本的強化をめざし、2023~27年度の5カ年で防衛費の総額を約43兆円とする方針を定め実行中だ。
防衛省は25年度予算概算要求で過去最高の約8兆円を計上、特に、防衛力強化の基盤となる人材確保のための事業が注目されている。宇宙やサイバー空間など防衛の分野が広がる中、今の定員で機能する組織の構築が期待される。
現在は少子化で企業も役所も人材確保に必死であり、自衛隊員の獲得は苦戦が続いている。22年の自衛官等の採用計画数は約1万8000人だったが採用率は66%、23年は同約2万人で採用率は51%にとどまり過去最低だった。
自衛隊は精鋭あっての組織である。身体能力だけでなく、専門知識や高度な技術力なしには現在の防衛装備品を自在に使いこなすことは不可能だ。さらに、災害派遣も自衛隊の本来任務と位置付けられているため、大災害での動員力も維持する必要がある。
防衛省は7月に人的基盤強化に関する検討委員会を設置し、先月中旬に中間報告を出した。
その内容を踏まえ、概算要求では、給与見直しや隊舎の個室化など「処遇の見直し」、人工知能(AI)を活用した部隊の高度化による「省人化・無人化の推進」、さらに、装備品操作の基本教育を民間に委託するなど「部外力の活用」の3項目のコンセプトを掲げ、実現のための予算確保をめざす構えである。
中間報告は今の定員で高度な任務に対応するには「古い考え方や組織文化にとらわれない」施策が必要とし、人材確保への危機感なしには「国を守る任務に致命的な支障が生じる」と訴えている。
しかし、もう一点、危機感を持つべきことがある。それは防衛省・自衛隊の不祥事だ。最近も特定秘密法の不適切運用やパワハラ、手当の不正請求があった。
不祥事根絶に挑み、使命感ある人材が魅力を感じる組織にする必要がある。