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加齢性難聴の早期発見へ
耳の虚弱を無料チェック(フレイル)
商業施設で言語聴覚士に相談
名古屋市
加齢性難聴の早期発見に向け、名古屋市はこのほど、聞こえの状態などの相談に無料で応じる「ヒアリングフレイル(虚弱)チェック」を、市内の商業施設で初めて実施した。愛知県言語聴覚士会に所属する言語聴覚士6人が協力した。公明党の田辺雄一市議が同会の要望を基に、市に開催を働き掛け実現した。
言語聴覚士によるヒアリングフレイルチェックを見守る田辺市議(奥右)、加藤貴志県議(左隣)
ヒアリングフレイルチェックは、初めにセルフチェックの用紙を記入する。「会話をしているときに聞き返すことがよくある」「集会や会議など数人での会話がうまく聞き取れない」などの9項目で聞こえの状態を確かめる。一つでも当てはまる人には受診を勧める。日常生活で気になることなどについては、言語聴覚士が話を聴く。
相談に訪れた60代の女性は「当てはまる項目があった。自分の状態が分かり良かった」と語った。
当日は、ブースを設けた4時間に71人がセルフチェックを実施。60人程度が受診用のチラシを持ち帰った。チラシにはセルフチェックの結果が記されており、これを補聴器相談医に持参して受診するよう勧めた。
加齢によって気力・体力が落ち、要介護の一歩手前の状態にあることを「フレイル」という。市はその予防に向け、2021年度から、フレイルテストを各地で開催している。椅子から立ったり座ったりする動作を30秒間に何回できるかや、握力などを測定し、予防・啓発に取り組んでいる。
従来は身体的フレイルのみの測定だったが、今回、ヒアリングフレイルチェックを追加した。難聴になるとコミュニケーションが円滑にできなくなる。人との交流が減って社会的に孤立すれば、うつや認知症を発症する可能性が高まる。難聴に早く気付き、補聴器を使用するなどの対策を取ることは、認知症予防のために重要だ。市地域ケア推進課の担当者は「成果を踏まえ、次回以降の開催を検討していきたい」と話していた。
■党県本部の団体懇談会がきっかけ
今回のヒアリングフレイルチェック実施のきっかけとなったのは、公明党愛知県本部が08年から継続する団体懇談会だ。各種団体から要望を個別に聞き、政策に生かしている。県言語聴覚士会は今年3月に参加した際、高齢者の健診に聞こえのチェックを追加するよう要望していた。
これを受け、田辺市議は市に対し、市のフレイル測定会でヒアリングフレイルチェックを実施するよう要請。市と同会を橋渡しし、言語聴覚士の派遣を実現した。
県言語聴覚士会の村瀬文康副会長は、多くの相談者を集めたことに「改めて関心の高さを感じることができた」と感想を述べるとともに、「今後は、啓発活動を継続しつつ、聞こえに関して安心して相談でき、適切な補聴につなげる仕組みをつくっていきたい」と決意していた。