ニュース
埋もれた研究成果発掘へ
大学に「知財」専門家派遣
政府AI関連など特許取得支援
政府は10月以降、大学で埋もれている優れた研究成果を教員らと協力して発掘し活用するため、知的財産に詳しい専門家「知財戦略デザイナー」を大学に派遣する。今月4日から、派遣先となる大学の公募を開始しており、16日には大学への説明会を実施した。人工知能(AI)など最先端技術での特許取得を促し、産業分野における応用や国家プロジェクト化など価値の創出につなげる考えだ。
同デザイナーとして想定される人材は、弁理士や弁護士、企業の権利活用に詳しい専門家など。特許庁は、今後、25大学程度を選び、早ければ10月にも派遣を始める方針だ。
派遣先の大学で同デザイナーは、教員や知財戦略担当の大学職員と共に、権利化されていない研究成果を発掘。特許取得を促すとともに、権利の活用を見据えた知財戦略の作成を進め、産業との連携や国家プロジェクト化に向けて支援していく。対象となる研究は、「どこから芽が出てくるか分からない」(特許庁企画調査課)ことから科学技術全般とした。
今回、事業を進めることになった背景には、特許取得に対する大学教員の意識のばらつきがある。国内の大学からの特許出願件数は、2007年の7859件をピークに減少傾向にあり、特許出願が活発な米国、中国、韓国などと比べて低調なのが実態だ。
教員の中には、特許の重要性を理解していても、どう応用につなげるべきか思い描けない場合がある。このため特許庁は、デザイナーの派遣を通して「教員の視点に立って研究成果に価値を見いだしていきたい」としており、事業の継続へ、来年度予算の概算要求に関連経費を盛り込む方針だ。
党知的財産制度に関する議員懇話会会長 斉藤鉄夫 幹事長
弁理士の活躍に期待
知的財産を生み出す知の殿堂「大学」の役割は大きいものの、研究成果の財産化が進んでいないことが長年の課題となっており、私自身、国会質問などで財産化を援助するシステム整備を提案してきた。今回の事業は、こうした訴えを具体化するものであり、効果を上げることを期待している。
また特許権の取得を支援する弁理士の活躍の場を広げる取り組みとしても重視している。「知財戦略デザイナー」には、大学と産業界をつなぐ要として、暮らしの豊かさにつながる研究成果の発掘・活用を進めてほしい。