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ギャンブル依存症〝やめられない病〟と闘う(上)
分かち合う悩みや苦しみ
「家族の会」宮城県の会合から
米大リーグ、大谷翔平選手の元通訳の違法賭博問題で関心が高まった「ギャンブル依存症」。厚生労働省が2021年に公表した調査結果によると、わが国では2.2%(約196万人)の人にその疑いがあるという。世界保健機関(WHO)が治療の必要な精神疾患に認定し、ギャンブルをする人なら「誰でもなりうる脳の病気」である。“やめたくても、やめられない病”と闘う当事者や家族の姿を追った。
「全国ギャンブル依存症家族の会 宮城」の月例会で行われた「分かち合い」
■いいパパなのに
7月13日、仙台市でNPO法人「全国ギャンブル依存症家族の会 宮城」が月例会を開いた。当事者の家族や支援者の集まりだ。約40人で「分かち合い」を行い、悩みを語り合った。
終了後、初参加の人に話を聞いた。「夫は仕事も真面目で、子どもの前では、いいパパなのにギャンブルになると人が変わる」。“500円玉貯金”を手始めに家の現金を使い込んだ。うそをついて借金をしてギャンブルを続けているという。「私のせい? と自分を責めることがありました。経験者に気持ちを分かってもらい、具体的な解決策も聞けて心強い」と話す。
■共依存
当日は、6年前に夫婦で神奈川県の「家族の会」を立ち上げた田村有子さんが講演。田村さんの長男は温厚で友人も多く、高校時代はサッカー部の主将を務め、難関大学に合格した。卒業後、大手企業に就職してから3年目、金融会社から督促状が届き、長男のギャンブルと借金に気付く。当初「息子の借金も自分の借金と思い」肩代わりした。
だが、ギャンブルと借金は止まらない。「定期券を落とした」「会社の経費の立て替え」「これが最後」。長男は「自然と口からうそが出てしまうんだ」と泣きながら訴える。立ち直らせようと、給料日には全額引き出して借金を返済し、1日1000円を与え、GPS(全地球測位システム)を持たせ行動を監視。
結果、GPSは会社の机の中に置いてパチンコ店へ。「必死で息子をコントロールしようとしたが無駄」で会社での横領、失踪とかえって事態は悪化。長男を助けているつもりの田村さんは共依存に陥った。
7年前、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」(田中紀子代表)の相談会で助言を受け、長男をギャンブル依存症の回復施設「グレイス・ロード 甲斐サポートセンター」(山梨県甲斐市)に入所させた。そこで同じ問題を抱えた人々と体験を共有し、回復プログラムを実践。1年後、長男は「穏やかな笑顔が戻り」現在、岩手の回復施設に勤務する。
■回復の条件
相手を思っての行動が問題を悪化、助長(イネーブリング)させることがある。そこで生じる支配的な関係性を「共依存」という。ギャンブル依存症における「イネーブリング」は“借金の肩代わり”だ。田村さんは「息子はギャンブル依存症、私は共依存からの回復への道をそれぞれ歩んでいる」と語った。「家族の会」では回復の必要条件に「借金を肩代わりしない」「金銭管理をやめる」「自助グループや医療、回復施設の活用」を挙げている。









