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【主張】GDP600兆円 継続的な賃上げで経済成長を
生活実感に近い名目国内総生産(GDP)が年換算で607兆円となり、2015年に自公政権が掲げた「600兆円」の目標を達成した。コロナ禍など国内外の情勢変化にもかかわらず、公約を果たしたことを評価したい。
内閣府は15日、24年4~6月期のGDP速報値を発表した。名目GDP600兆円達成を「賃上げと投資がけん引する成長型経済への移行を示す数字だ」と岸田文雄首相が評価したように、日本経済は好循環の兆しを見せ始めている。物価変動の影響を取り除いた実質GDPは前期比0.8%増で、成長が1年続いた場合の年換算は3.1%増になった。プラスの経済成長は2四半期ぶりだ。
物価高で節約志向が強まる中で、内需の柱である個人消費が前期比1%増と5期ぶりに増加に転じたことも家計の意識変化をうかがわせる。自動車購入が大きく伸び、外食や衣服の消費も上向いている。6月からの「定額減税」が家計を下支えし、消費を後押しした効果も見逃せない。
企業の設備投資が幅広い分野で活発化し、経営者が前向きな姿勢を見せていることも心強い。「失われた30年」とも呼ばれたデフレ経済を払拭する好機であり、豊かさを実感できる持続的成長へとつながる足腰の強い経済基盤を構築せねばならない。
重要なのは、物価上昇を上回る継続的な賃上げを軸とした経済成長の実現だ。政府の後押しもあり実質賃金はプラス基調にある。この勢いを保つためにもDX(デジタルトランスフォーメーション)支援などを通じ人手不足を緩和しつつ、中小企業を含む企業全体の生産性を底上げし、賃上げの原資を確保しやすくすることが必要だ。
日本経済にとって当面の課題は、景気減速も懸念される米国や情勢不安が続く中東の影響だ。日本銀行の金融政策修正を受け、5日の東京株式市場が大幅下落した動揺も残る。回復途上の日本経済には、政府と日銀の緊密な連携が、これまで以上に大切だ。