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コラム「北斗七星」
劇作家・演出家で兵庫県立芸術文化観光専門職大学(豊岡市)の学長を務める平田オリザ氏の寄稿「演劇教育の可能性」が本紙(7月19日付)に掲載された。このテーマを氏が深く掘り下げた著書が『ともに生きるための演劇』(NHK出版)だ◆人間は一人一人違う。価値観やライフスタイルの多様化が進み、国籍も文化も異なる人々が共存する時代を迎えた。異なる価値観や文化的背景を持った人たちとの対話や共生は決して容易なことではない。それを可能にするのが演劇教育だと◆演劇は、ある設定に基づき、他者を演じることで異なる価値観との接触を疑似体験できる。「どうして今、この人はこんなことを言ったんだろう。自分なら絶対に言わないのに」。せりふにこうした違和感を覚えた時、それが異なる価値観を理解する始まりとなる◆多文化共生型の社会は、みんな違って大変だ。それぞれの価値観を擦り合わせることによって新しい価値を生み出していく営みを避けては通れない。そう認識することが大事だと氏は指摘する◆希望を込めて氏は子どもたちに伝えている。「人は心から分かり合えないんだよ、初めからは。人は心から分かり合えないんだよ、すぐには」と。(佳)