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【主張】循環経済の促進 資源再利用と成長 両立めざす
従来の大量生産・消費・廃棄型の経済から資源を循環利用しながら付加価値を生み出す新たな社会システムへの転換に向けて、政策を抜本強化すべきである。
政府は7月30日、「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の促進に向けた閣僚会議の初会合を開催した。
循環経済とは、資源の再利用による循環と経済成長の両立をめざす概念だ。
会議では、循環経済の実現を国家戦略と位置付け、年内にも政策パッケージを作成する方針を確認した。これは公明党が5月、政府に提言していた内容に沿うものであり、評価したい。
今月2日には、廃棄物削減やリサイクル推進などを促す「第5次循環型社会形成推進基本計画」も閣議決定されており、着実な実行が望まれる。
循環経済の実現が急がれる背景には、資源を巡る国際情勢の厳しさがある。
世界的な資源需要の増大などによって素材や資材の価格が高騰し、入手が難しくなっている。資源の乏しいわが国にとって循環経済の推進は資源の海外依存の脱却につながり、経済安全保障の観点で重要だ。
国内産業の競争力を強化していくためにも、循環経済の実現は欠かせない。
世界全体では循環経済の市場規模が2030年までに4.5兆ドル(約653兆円)に達すると見込まれ、政府は国内の市場規模を同年に80兆円に拡大する目標を掲げている。企業に加えて消費者の意識改革を通じた市場の形成が急がれる。
一方、資源循環の取り組みは、資源の輸送や加工に伴う温室効果ガスの排出削減に寄与する。50年までに排出を実質ゼロにする上で不可欠な取り組みだ。
課題となるのは、資源の再利用拡大に向けた環境整備である。例えば、太陽光パネルや紙おむつなどのリサイクルには高度な技術が必要とされているほか、再生品は強度や品質の面で課題を指摘する声もある。
プラスチックや金属など資源の回収体制の検討と同時に、技術開発や設備投資への促進策が政府に求められよう。