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【主張】ドラッグ・ロス 日本での創薬促し解消着実に
海外で実用化されている医薬品が、日本では開発に着手すらされておらず使用できない。こうしたドラッグ・ロスへの対応は喫緊の課題だ。実効性のある対策を一段と進め、薬を早く使いたいと願う患者の不利益をなくしたい。
政府は7月30日、日本の創薬力強化に向けた政策目標と5年間の工程表を公表した。ドラッグ・ロスを解消するため、国内未承認薬のうち必要性の高い医薬品について、2026年度までに開発の着手をめざすことなどが柱だ。
公明党は当事者らの声を聴き、小児がんなどのドラッグ・ロスの早期解消へ、政府に対応を強く求めてきた。今回、期限を区切って具体的な施策や成果指標を示したことを評価したい。
厚生労働省によると、欧米で承認されているのに日本では未承認の医薬品は、昨年3月時点で143品目ある。このうち国内で開発が未着手の薬は86品目あり、患者数の少ない希少疾患や子ども用が中心だ。
ドラッグ・ロスが生じる要因には、欧米諸国に比べ低くなりがちな日本の薬の公定価格や、海外との創薬環境の違いなどが指摘されている。新薬開発は近年、海外の新興企業が担うことが多く、日本での開発を促していくことが重要だ。
工程表には、新薬の承認に必要な治験(臨床試験)に関して、国際水準の臨床試験体制の整備や国際共同治験の呼び込みのほか、海外の新興企業に対する積極的な参入支援なども盛り込まれた。確実に開発の着手につなげたい。
一方、未承認薬であっても、患者が希望すれば使用できる仕組みを充実させることも重要ではないか。現状では国が安全性や有効性を確認した上で、希望する患者に臨床研究として実施する「患者申出療養制度」がある。より使いやすいよう、運用方法や手続きの改善、患者の経済的負担の軽減などを検討してほしい。
革新的な医薬品の開発・実用化は、国民の命と健康を守ることにつながる。患者に必要な薬が一日も早く届く体制整備を急ぎたい。