ニュース
コロナ患者、全国で急増
長崎大学大学院 迎寛 教授に聞く
新型コロナウイルス感染症が感染症法上の「5類」に移行してから1年以上が経過し、通常の医療提供体制で迎えた今年の夏。国内のコロナ感染者数は増加傾向にあり、手足口病など“夏の感染症”も流行している。現在の感染状況や必要な対策について、長崎大学大学院の迎寛教授(呼吸器内科)に聞いた。
変異株「KP・3」が流行
マスク、換気、手洗い、場面に応じて対策
――新型コロナの感染状況と見通しは。
感染者は増えており、直近の1週間では医療機関1カ所当たりの全国平均が11人を超えた。せきや喉の痛み、発熱といった、これまでの症状の特徴に大きな変化はないが、高齢者を中心に入院症例も増えている。
流行している株は、オミクロン株から派生した新たな変異株「KP・3」が主体だ。少なくとも重症化しやすいことはないとみているが、夏休みやお盆で人の移動が活発になることで、流行の「第11波」に当たるような波が来て感染が広がる可能性は十分ある。
手足口病も例年上回る
――夏の感染症も流行している。
口の中や手足などに発疹が出る手足口病や、結膜下に出血を起こす急性出血性結膜炎の感染者が例年に比べて増加している。背景としては、ここ数年、コロナの感染対策によって、夏に流行しやすい感染症にかからなかった人が多く、結果として抗体を持つ人が少ないことがある。感染対策が緩和され、夏の感染症も広がりやすいため、免疫が落ちているときなどは、より注意してほしい。
――必要なコロナ感染対策は。
手洗いや必要に応じたマスク着用、換気が引き続き有効だ。「3密」のような場面では特に気に掛けるなど、状況によって対策を変えていくことが求められる。
コロナに感染したことを示す抗体の保有率について、厚生労働省が3月に実施した調査では6割を超えており、国民には最低レベルの免疫はあると言える。ただ、高齢者は抗体保有率が低いため、重症化予防の観点からワクチン接種が引き続き重要になる(※)。重症化リスクが低い人も、リスクが高い高齢者らを守るという視点を忘れてはいけないし、高齢者ら自身もリスクを認識した上で、外出の際には適切な対策を心掛けてほしい。
――今後の課題について。
社会生活はコロナ前に戻していくべきだが、コロナはインフルエンザより重症化率が依然として高いとも考えられている。一方で、コロナの治療では4月から国の公費支援が終了したこともあり、ゾコーバ、パキロビッド、ラゲブリオなどの高額な抗ウイルス薬を服用する人が減ってきている。後遺症のリスクも考えると、できる限り早く服用することが望ましく、国として何らかの支援があるとありがたい。
※今年度は秋以降に、原則65歳以上を対象として定期接種を実施予定