ニュース
【主張】公職選挙法の見直し 想定外の“悪用”防ぐ対応を
有権者の代表を選出する選挙で、営利目的や売名行為など選挙と無関係な運動が展開される状態は、ふさわしくない。有権者が1票を託す判断材料として、公費も使われる選挙ポスターや政見放送が本来の役割を果たせるよう、何らかの対応を検討する必要がある。
先の東京都知事選では、選挙ポスター掲示枠が事実上、売買されたほか、政見放送で一部の候補者が非常識な振る舞いをするなど、公職選挙法(公選法)が想定していない事態が相次いだ。公明党は公選法の見直しを検討するプロジェクトチームを設置し、きょう18日に初会合を開く。
都知事選では、候補者と関係ない同一のポスターが掲示板に多数貼られ、有権者に困惑が広がった。特定の政治団体が多くの候補者を擁立し、寄付をした人にポスターを貼る権利を譲ったためだ。中には有料サイトに誘導する2次元コードを載せたものもあった。
政見放送では、候補者が突然、服を脱いだり、奇声を上げるといった言動が問題視された。4月の衆院東京15区補欠選挙では、特定の候補者陣営が他の陣営の選挙運動を妨害したとして逮捕された。自由な選挙を“悪用”するような行為が繰り返されないよう、対応を求める声は強まっている。
公選法は、選挙が公明かつ適正に行われることを確保し、民主政治の健全な発達を期することを目的としたものだ。憲法が保障する「表現の自由」の観点から、ポスターや政見放送の内容をチェックすることは検閲に当たる可能性もあり、直接的な規制を設けることには慎重であるべきだろう。
とはいえ、明らかに公序良俗に反するような言動を野放しにしていいはずはない。公選法の趣旨や選挙の秩序を守るためにどうするか、規制のあり方を検討しなければならない。
公正な選挙は民主主義の根幹であり、有権者に望ましい選挙の実施を確保するのは政治の責務だ。速やかに法改正などの対策が実現できるよう、各党で議論を進め、与野党間の合意形成につなげたい。