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【主張】保護司の安全対策 面接場所の整備など対応急げ
罪を犯した人の再犯を防ぎ、社会復帰を支援する保護司は、更生保護の重要な役割を担っている。先月、大津市で保護司が殺害された事件は、その保護司制度の根底を揺るがしかねない事態だ。保護司の不安解消に努め、安全確保に向けた対応を急がねばならない。
法務省は事件後、全国50カ所の保護観察所に保護司への聞き取りを指示した。21日に法務省で開かれた保護観察所長らを集めた会議では、保護司からの不安の声が報告された。法務省は保護司が安心して活動できるよう、現場の声に耳を傾け、リスクの芽を摘む対策を検討してほしい。
安全確保に向けた課題の一つは、保護観察対象者との面接場所の確保だ。保護司は法務省の保護観察官と連携して対象者と面接し、生活や就労の相談に乗る。対象者との信頼を築くため面接は自宅に呼ぶケースが多く、今回の事件もそうだった。助けが呼べないような状況では、トラブルが起きた時の対処が難しい。
各地には面接に利用できる活動拠点「更生保護サポートセンター」が存在するが、公共施設内に設置されていることが多く、利用できる時間帯や曜日などに制約があり、使いにくいとの声がある。柔軟な運用や設置箇所の拡大を進めていく必要がある。
総務省行政評価局が2019年に実施した保護司へのアンケートでは、4人に1人が「1人で面接することに不安や負担を感じている」と回答した。保護司が不安を感じる対象者については、複数人で面接するといった工夫も大切だ。
公明党が17日に行った政府への提言では、こうした点を踏まえ、自宅以外の面接場所の確保や保護司の複数担当制を強調している。
保護司制度を巡っては、民間の篤志家に頼っている人材確保の手法が困難になり、担い手不足や高齢化の課題にも直面している。持続可能な制度のあり方を議論している法務省の有識者検討会では、事件を踏まえた安全対策も含めて、保護司を支える体制強化へ知恵を絞ってもらいたい。