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【主張】骨太の方針 賃上げ定着へ政策総動員せよ
賃上げを起点に、個人消費や企業収益を押し上げ、日本経済を再び成長軌道に乗せる取り組みを加速させていきたい。
政府は21日、来年度の予算編成の指針となる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定した。公明党の提言を反映し、大企業だけでなく中小企業にも賃上げを定着させることを施策の柱に据えており、評価できる。
今年の春闘の賃上げ率は33年ぶりの高水準となる5%超に達する見通しだ。ただ、物価変動を考慮した実質賃金はマイナスが続いている上、大企業に比べて中小企業の賃上げは十分に進んでいない。背景には、物価高に伴うコスト増などを価格に転嫁することが難しく、賃上げを行う余力が少ないことがある。
そのため、骨太の方針では中小企業が適切に価格転嫁できる環境整備を促すため、公明党が申し入れた、不公正な取引を取り締まるための下請法改正の検討など、対策を強化することが明記された。
賃上げに関しては、国が決める公定価格で運営する医療機関や介護施設への支援継続のほか、最低賃金の全国加重平均時給を「2030年代半ばまでに1500円」とする政府目標を、より早く達成することも掲げている。最低賃金は25日から今年度の改定の議論を始める。政府の力強い後押しで、幅広い業種での賃上げを実現すべきだ。
一方で、賃上げの定着には企業の稼ぐ力を高めることが欠かせない。骨太の方針には、半導体など最先端技術への投資拡大や、スタートアップ(新興企業)支援、中小企業向け輸出・海外進出サポートなどが盛り込まれた。しっかり活用されるよう丁寧に周知し、実効性を高めてもらいたい。
政府は日本経済の現状について「デフレから完全に脱却し、成長型の経済を実現させる千載一遇の歴史的チャンス」との認識を示している。デフレ下で染み付いたコストカット型の経営の転換をはじめ、日本経済の構造改革に向け政策を総動員していくべきである。