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コラム「北斗七星」
米ソ冷戦期の1983年9月26日、ソ連の早期警戒衛星システムは、米国から大陸間弾道ミサイル5発が発射されソ連に向かっていると警報を発した◆独自に情報を精査したソ連軍の当直将校は誤報であると断定。報復攻撃といった事態に至らずに済む。システムは太陽光の反射によって誤作動したことが後に判明する。人間の常識的な判断で核戦争が回避されたと語り継がれている事案である◆核保有国はこれまで、コンピューターによる核兵器の運用システムの自動化を進めてきたが、新たにAI(人工知能)技術の活用を模索しているらしい。早期警戒システムや核使用の決定プロセス、ミサイルなど核運搬手段への導入が想定されている◆当然ながら懸念が広がる。いかにもリスクが大きいのだ。AIの思考プロセスは“ブラックボックス”。なぜそのような分析結果に至ったのかは検証できず、人間はAIを信用すべきかどうか疑心暗鬼に陥らざるを得ない◆人間の意思決定をAIに委ねてはなるまい。イタリアで開催中の先進7カ国(G7)首脳会議でもAI技術への対応が話し合われたようだ。そもそも核兵器など必要としない世界に向けて常識的な議論を進めるべきだろう。(中)