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共産の「年金が月2万円削減」のウソ
読者の質問にお答えします
不安あおる デタラメな計算
マクロ経済スライドで給付額は減らない
問い 参院選で日本共産党が“「マクロ経済スライド」で基礎年金(国民年金)が月2万円減らされる”と喧伝していますが、どういうことですか。本当に年金額が減るのでしょうか。(東京都 H・S)
共産党が言う、年金制度のマクロ経済スライドで「基礎年金の月2万円削減」は、政府の試算をねじ曲げたデタラメな計算です。
2004年の年金制度改革で導入された同スライドは、将来の年金水準を確保するため、物価や現役世代の賃金が上昇して年金額が前年度から増える場合に限って、増額の幅を抑える仕組みです。よって、同スライドで年金額が減ることはありません。
ただし、賃金の上昇が年金額の伸びを上回ることになるので、年金額が増えていても、その時々の現役世代の平均手取り賃金額に対する年金額の割合(所得代替率)は下がることになります。
政府の試算では、同スライドによる調整が終わる43年度以降、基礎年金(夫婦2人分)の所得代替率が、14年度の36.8%から3割減の26%程度になると推計しています(経済再生が進むケースの場合)。
これをもって共産党は、現在は1人当たり月約6万5000円の基礎年金が、3割減の4万5000円となり、「2万円減る」と計算しているようですが、全くの誤りです。
所得代替率26%は、あくまでも、14年度よりも増えていることが前提の「43年度の現役世代の賃金」に対する比率です。一方、共産党の言う「2万円減る」とは、この「26%」を「14年度の賃金」に対する比率と考えて算出したもの。つまり、対応していない数字を掛け合わせた、めちゃくちゃな計算です。
政府は年金の見通しについて、現役世代の賃金の方が伸びていくことで所得代替率は下がるものの、賃金・物価の上昇に伴って給付額そのものは今よりも増えるとしています。ですから、43年度の基礎年金については、給付額は現在より増えますが、物価の上昇に伴う増額を差し引いて14年度の物価に直した額は、月約6万3000円になると推計していますので、基礎年金の実質的な価値は現在とほぼ変わらないと見込んでいます。
この額に対して、共産党は「架空の設定に基づく数字」(6日付「赤旗」)と批判しています。しかし、政府の設定を架空というならば、賃金の上昇を前提に算出される「所得代替率26%」も架空となり、共産党の「2万円減る」という計算も「架空の設定」ということになります。
選挙目当てに、都合のよい数字だけをつまみ食いして国民を惑わし、不安をあおる共産党のデマ宣伝に、だまされてはいけません。