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2024年6月1日

【能登地震 発災から5カ月】輪島塗の伝統絶やさず

職人魂で復活に懸ける 
制作を再開、販売通じてPR 
石川の「輪島キリモト」

石川県の伝統工芸の一つで国の重要無形文化財に指定されている「輪島塗」は、能登半島地震で工房が損壊、焼失するなど深刻な被害を受けた。発災から5カ月。生活も、なりわいも、再建への長い道のりを歩む被災地で、地域に尽くしながら伝統産業の復興をめざして奮起する職人がいる。=能登半島地震取材班

輪島市内の工房で下地塗りを施す小路さん

輪島市杉平町にある「輪島キリモト」(桐本泰一代表)は、輪島塗の製造・販売を手掛ける創業200年以上の老舗。工房内で漆塗りの職人・小路貴穂さん(53)が、真剣なまなざしで作品の下地塗りを施していた。均等な厚さで塗るために神経を研ぎ澄ませ、はけを滑らかに動かす。

小路さんは1月1日、自宅から車で30分ほど離れた場所で被災した。周辺の道路は崖崩れに遭ったりしたが何とか迂回路を見つけ、翌2日に避難所の市立大屋小学校で家族と再会した。自宅は傾いて住めなくなっていた。

避難所に身を寄せ始めて程なく、救援物資の運搬や掃除などに携わり始める。「地震の恐怖から気を紛らわすため」だったが、約600人いる避難所で混乱が生じないよう無我夢中で対応に当たり、途中からは運営本部の副代表に就いた。

避難所運営のピークを乗り越えた3月頃から、輪島塗の仕事に思いを馳せるように。幸いにも輪島キリモトの工房は倒壊しなかった。5月、避難所運営と両立しながら仕事を再開した。

工房や店を失った同業者へ「諦めないで」とエール込めて

大規模火災で焼失した輪島市の朝市通り。輪島塗の店も多く立ち並んでいた=5月29日

しかし、多くの同業者は工房や店舗が損壊し、業界全体が困難に直面したままの状態。「復興までの間に漆器の存在を忘れる人や、職人を諦める人を何とか食い止めたい」と小路さんは思い立った。輪島塗のPRに打って出ようと、5月には県外のフリーマーケットに足を運んで作品を販売した。高級品のイメージからか、触るのをためらう参加者。小路さんは「美術館じゃないから」と手に取るよう勧め、実用的で日常生活に使える魅力を伝えた。

「日本を代表する伝統産業を絶やさぬよう、職人の一人としてアクションを起こしていきたい」。こう決意する小路さんは今、身近に感じてもらえるような新しい作品を創れないかと思案する。

103事業所が加盟する輪島漆器商工業協同組合によると、地震によって17の事業所や店舗が「輪島朝市通り」の大規模火災で焼失したほか、全体の7割に上る70事業所以上が半壊以上の被害に遭った。市内に約400人いる職人は、ほとんどが自宅兼工房のため、住居が被災して今も仕事ができない状況の人が多い。

輪島塗復活へ厳しい状況は続く。それでも同業者に再建の可能性を示す思いで、輪島キリモトの桐本代表は、3月に製造スペースを一層確保するための仮設工房を自費でいち早く建設した。「輪島塗だけでなく、漁業や農業など、ほとんどの人が被災している中、石川県を愛する人たちと意見交換し、時間がかかっても一緒に復興していきたい」。桐本代表は力を込める。

現場の声を聴き公明が復興へ全力

小路さん(左)を見舞い懇談する谷内県代表

公明党は、被災地で工房が被害を受けた輪島塗職人たちの声を聴きながら、再建支援を国に要請。事業再開に必要な設備や材料の購入などにかかる経費に対し、1000万円を上限に補助する制度の継続などを実現している。

5月27日、輪島市で小路さんを見舞い、懇談した公明党石川県本部の谷内律夫代表(県議)は「伝統産業を担う人たちに寄り添い、今後も復興へ全力で支援する」と語る。

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