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こう使われる消費税
21日(日)投票の参院選では、10月に予定される消費税率10%への引き上げが、大きな争点の一つだ。消費税は2014年4月に5%から現在の8%にアップして以降、増収分は全て社会保障の充実と安定化に充てられている。高齢社会を支える消費税はどう使われるのか――現在と10月からの二つに分けて解説する。
現在(税率8%)
基礎年金の安定化
国庫負担2分の1の財源に
現在の消費税率8%への引き上げによって得られた増収分の一部は、老齢基礎年金の国庫負担割合を2分の1にするための財源として活用され、年金財政の安定化に大きく貢献している。
老齢基礎年金に占める国庫負担の割合はもともと3分の1だったが、公明党が主導した04年の年金制度改革で2分の1に高める方向性が示され、段階的に引き上げられてきた。ただ、その財源には特別会計の剰余金や国債を充てるなど毎年度のようにやり繰りが続いていた。
しかし、現在は恒久的に確保できるようになり、18年度の増収分8.4兆円のうち、3.2兆円が国庫負担の財源として使われている。
老齢基礎年金
日本に住んでいる原則20歳以上60歳未満の全ての人が加入する年金で、支払った保険料に応じて受け取ることができる。国庫負担の割合を2分の1に高めなければ、将来の給付水準の引き下げや保険料の引き上げにつながる恐れがあった。
健康保険料の軽減
難病支援対象の大幅拡充も
国民健康保険と後期高齢者医療制度に加入する所得の低い人への支援策として、保険料の軽減対象となる所得基準額が見直され、対象者が拡大された。これにより、保険料の負担が軽くなる人が約500万人増えた。
公明党の推進により、医療費が助成される「指定難病」や「子どもの難病(小児慢性特定疾病)」の対象が大幅に拡大。
指定難病は56から333疾病に、子どもの難病も514から762疾病に拡大した。
年金加入期間10年に短縮
年金を受給するために必要な加入期間(資格期間)が、25年から10年に短縮された。17年8月から始まり、今年3月までに約59万人が無年金を避けられるようになった。
保育の受け皿50万人分増加
待機児童を解消するため、保育の受け皿が17年度末までに約50万人分も増加した。小学生を預かる放課後児童クラブの利用者は、18年度末までに約30万人分が増えた。
介護職員の賃金アップ等
急性期から慢性期まで患者の状態に応じた病床の整備や在宅医療の充実、医師や看護師ら医療従事者の確保などが進んでいる。介護分野でも、職員1人当たり月平均1万2000円相当の賃金アップなどが実現している。
10月から(税率10%)
幼児教育・保育無償化
待機児童解消(32万人分)も加速
10月からの消費税率引き上げに伴う増収分(約5兆円強)は、2兆円程度が教育費負担の軽減や子育て支援、介護人材の確保などに充てられる。
これによって、10月から幼児教育・保育の無償化がスタートする。3~5歳児(就学前3年間)は全世帯、0~2歳児は住民税非課税世帯で認可保育所、幼稚園、認定こども園の利用料が無料になる。認可外保育施設や幼稚園の預かり保育の利用者も含め、約300万人が対象となる。
併せて、待機児童の解消へ向けた取り組みも加速し、20年度末までに保育の受け皿は32万人分整備される。
高等教育の無償化 来年4月から実施
授業料減免や給付型奨学金で
来年4月からは、所得が低い世帯の学生を対象にした大学など高等教育の無償化も始まる。授業料減免や返済不要の給付型奨学金が大幅に拡充される。
住民税非課税世帯と、それに準じる世帯が対象で、新入学生だけでなく在校生も含まれる。
介護保険料見直し
所得の低い高齢者は減額
所得の低い高齢者らの負担を和らげるため、介護保険料が軽減される。
対象は、65歳以上の約3割に当たる、市区町村民税非課税世帯の高齢者。住民税非課税世帯のうち、本人の年金収入などが年80万円以下の人について、負担割合を現在の基準額の45%から30%に引き下げる。それ以外の非課税世帯も、負担割合が現行の75%から、本人の年金収入などに応じて50%または70%に軽減される。
なお、実施時期や軽減額は市区町村によって異なる(基本的には10月から実施)。
低年金者に年間最大6万円支給
低年金の高齢者に対して、保険料を納めた期間に応じて月最大5000円(年間6万円)が年金の支給額に上乗せされる。
対象者は、所得が国民年金満額(年約78万円)以下で市区町村民税非課税世帯の老齢基礎年金受給者。所得が年間約88万円までの人や、一定の障害基礎年金・遺族基礎年金受給者を対象とした支給もある。対象人数は合計で約970万人に上る見込み。
経験豊富な介護人材の処遇改善
介護人材の処遇を改善し、介護の受け皿を拡充する。
経験や技能のある勤続10年以上の介護福祉士に対し、月額8万円相当の処遇改善などを行うことを想定し事業費を確保。これに基づき、各事業所の裁量で勤続10年以上の介護福祉士のほか、その他の介護職員、看護師や介護支援専門員(ケアマネジャー)などの処遇改善にもつなげてもらう。
<Q&A>
Q なぜ10%に引き上げる
A 社会保障の充実と安定に必要
高齢化の進展に伴い、社会保障費は年々増加する一方だ。だが、その財源は保険料だけでは足りず、国の借金である赤字国債に頼らざるを得ない部分もある。それは、子や孫など将来世代に負担を先送りするもので、制度の持続性が危ぶまれる。
そこで、社会保障の費用を働く世代だけでなく、あらゆる世代が広く分かち合い、安定した財源を確保するため、消費税を社会保障の財源としている。消費税収は景気や人口構成の変化に左右されにくく、安定している特徴がある。
Q 低所得者への影響が心配
A 軽減税率(公明推進)で負担を緩和
消費税には所得の低い人ほど負担割合が高くなる「逆進性」の問題がある。
そこで、10%への引き上げと同時に、飲食料品(酒、外食は除く)などの税率を8%に据え置く軽減税率が実施される。これは政党の中で公明党だけが提案・主張してきたものだ。軽減税率によって、飲食料品への支出割合が高い低所得者ほど恩恵が及ぶ。
Q 野党は増税に凍結・反対を主張
A 代替財源あいまいで無責任
野党は消費税率10%への引き上げの凍結・反対を訴えているが、各党の公約である子育て支援などに使う代替財源はあいまいで、説得力に欠ける。
実際、各紙の社説を見ると、「大企業や富裕層への課税強化、行政改革を主張するが、高齢化で膨張していく予算をそれだけで賄うのは難しい」(日経・4日付)、「富裕層への課税強化や法人税率引き上げなどを提案したが、消費税に代わって恒久的な安定財源となり得るか」(毎日・同)などと一斉に批判している。
これでは、社会保障の持続性は確保できず、国民の将来不安は解消されない。