公明党トップ / ニュース / p349072

ニュース

2024年5月19日

「断らない相談支援」広がる

介護、障がい、子育て、困窮など、複合的な悩みに対応 
今年度346自治体で実施 
公明、全国展開をリード

介護や障がい、子育て、生活困窮など、複雑化・複合化した住民の悩みに対応する「断らない相談支援」を柱とした重層的支援体制整備事業(以下、重層事業)が、今年度中に346市区町村で実施される予定です。2021年度から始まった同事業は公明党が全国各地で推進してきました。福井県坂井市の取り組みを追うとともに、同事業に詳しい加山弾・東洋大学教授から話を聞きました。

■課題解決へ部局横断会議/訪問通じ関係機関につなぐ(福井・坂井市)

福井県坂井市(人口約9万人)では、高齢の親とひきこもりの子が同居する「8050」世帯や、介護と子育ての「ダブルケア」など、複数の課題を抱えるケースの解決に向け、21年度から重層事業を実施しています。

市民からの相談を、高齢者、障がい、子ども、生活困窮など福祉分野の全ての課の窓口で、内容を問わず受け入れる体制を整備。複数の課をまたぐ支援が必要な場合には、各課に配置された「相談支援包括化推進員」が連携し、支援の調整を行います。

それでも対応が困難な事例については、各部局の担当者などで月1回以上開催している「さかまる会議」(“さか”い市民の相談を“まる”ごと受け止める会議)の議題に載せ、支援の方向性や各課の役割を話し合います。

例えば、ある家族は夫婦(60代)と無職の子(30代)、祖母(80代)の3世代が同居。母親には精神障がいがあり、家計管理を担っていた父親が病気で倒れたことで、生活が成り立たなくなりました。

祖母から相談を受けた地域包括支援センターは、課題を自分たちだけで抱えず、さかまる会議へ。自立支援や障がい福祉、医療など、これまで利用されていなかった具体的な支援につなげることができました。

市の担当者は「関係者が知恵を出し合うことで、従来、手を打てなかった課題に対応できるようになった。“市民の相談は何でも受け止めよう”という職員の意識改革も進んでいる」と語っています。同市の重層事業については、公明党の永井純一市議が実施を強力に推進してきました。

重層事業は、市区町村が包括的な支援体制を構築できるよう、国が各分野の補助金を一括交付できる仕組みを作り、21年度から施行されています。制度に人を合わせるのではなく、人を中心として関係機関が伴走型で支援を行うのが特長で、「断らない相談支援」を柱として、孤立した人の社会参加を促す「参加支援」、居場所の確保といった「地域づくり支援」を一体的に実施します。多機関が協働しての取り組みや、訪問などのアウトリーチを通じた継続的な支援も事業の一部となっています。

坂井市のような重層事業の土台となっているのが、15年度から始まった生活困窮者自立支援制度です。生活困窮者を生活保護に至る前の段階で支えるため、分野横断で幅広く支援する制度ですが、20年6月の社会福祉法改正で、その対象を全ての地域住民に広げ、世代・属性を問わない支援体制の構築をめざす重層事業が創設されました。

当時の菅首相(中央)に提言を手渡す公明党の議員=2021年5月21日 首相官邸

地域に密着し、悩みを抱える人々の声を受け止めてきた公明党は、生活困窮者自立支援制度の創設と財源確保を強力に推進しました。その後の重層事業についても、社会福祉法改正の議論をリードするとともに、法改正後の20年10月には山口那津男代表が参院代表質問で「全市区町村での実施をめざすべき」と主張。21年5月に菅義偉首相(当時)に行った孤立防止対策に関する提言でも全国展開を強く要望しました。

公明地方議員も各議会で重層事業の導入を訴え続けており、実施自治体は施行初年度の42(21年度)から346(24年度)へと8倍に増え、全市区町村の2割に達する見通しです。

■地域づくりを前に進めるチャンス/東洋大学福祉社会デザイン学部 加山弾教授

重層事業の創設は、戦後の社会福祉の大きな転換点の一つと言えます。高齢や障がい、生活困窮など、各分野ごとだった国の補助金の一体的な運用に道が開かれました。各自治体が取り組んできた地域づくりを、官民や行政の垣根を越えて、さらに前へ進めるチャンスです。

実施自治体の拡大が望まれますが、支援を受ける当事者や地域住民、行政など関係者間の丁寧な合意形成が重要です。個別の施策にとらわれず、わがまちの地域づくりを熟議する中で、包括的な支援体制を整備してほしいと思います。

関係者の調整役となる「コミュニティソーシャルワーカー(CSW)」の育成と増員は不可欠です。公明党には与党の一員として、同事業の一層の推進を期待しています。

公明新聞のお申し込み

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

定期購読はこちらから

ソーシャルメディア