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コラム「北斗七星」
「あの頃はよかった」。年を取ると口にしそうな言葉だが、「負け犬の遠吠え、負け惜しみの台詞である」とシンガー・ソングライターの財津和夫さんは言う(『じじぃは蜜の味』)。「現在より過去の世の中の方がよかったかどうかなんてどうやって証明すればいいのか」と◆「昔はよくなかった」と断言するのは作家の嵐山光三郎さん。貧しくてガムシャラに生きてきた志をいとおしく感じ、「昔はよかった」と回想するが、「今が一番いい」とエッセーに書いていた。老いると人生観が変わり、「朝令暮改」ならぬ、「長齢暮改」で、1時間で意見が変わることもあるそうだ◆批評家の東浩紀さんは著書『訂正する力』で「老いるとは変化することであり、訂正すること」と、老いの肯定を説く。「訂正する力とは、過去との一貫性を主張しながら、実際には過去の解釈を変え、現実に合わせて変化する力」◆今の政治は批判を恐れて「訂正する力」を欠いていると見る東さんは、政治とは正義を振りかざす「論破」のゲームではなく、互いの立場を尊重し議論して意見を変えていく「対話のプロセス」と指摘する◆人間でいえば還暦を迎える公明党は、丁寧に幅広い合意形成を進める。これまでも、これからも。(光)