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【主張】成年後見の見直し 案件ごとの利用など柔軟な制度に
高齢化の進展、中でも単身高齢者の増加により、成年後見制度に対するニーズの増加が見込まれる。9日から法制審議会(法相の諮問機関)の部会で制度の見直しに向けた検討が始まった。安心して利用できる制度になるよう、活発な議論を期待したい。
成年後見制度は、高齢社会を支える仕組みとして、2000年に介護保険制度と同時に始まった。認知症や知的障がいなどで判断能力が不十分な人の権利や財産を守るため、家庭裁判所が選任した法定後見人が、本人に代わって財産管理や福祉サービスの手続きなどを行うものだ。
認知症の人は増え続けており、25年には65歳以上の高齢者の5人に1人、約700万人になると推計されている。ただ、制度の利用者は23年末時点で約25万人にとどまっている。
利用が増えない背景には、制度の使いにくさが指摘されている。課題の一つが制度の開始、終了に関するルールのあり方だ。
例えば、配偶者の遺産相続を機に制度を利用した場合、相続が終われば法的支援の必要性は低くなる。だが、現行制度ではいったん利用し始めると、本人の判断能力が回復しない限り、やめられない。
しかも、後見人への報酬は払い続けることになる。司法書士や弁護士、社会福祉士ら専門職に対しては、月2万~6万円の負担が生じる。こうした制約や負担が大きいことが、利用抑制を招いている要因と指摘されている。
法制審では、利用期間に区切りを設ける期間制の導入や、特定の案件ごとに後見人の利用を可能にする仕組みなどを議論する。
また、本人の状況に合わせて後見人を柔軟に交代できる方策も検討する。
具体的には遺産相続の時は弁護士で、解決後は日常生活を支える福祉の専門家に代わるなど、本人のニーズに合った支援を受けられるようなイメージだ。現行制度を点検し、問題点を改善することが重要である。より身近な制度になるよう幅広く議論してほしい。