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コラム「北斗七星」
ギリシャ神話のオリンポス十二神に名を連ねるヘルメスは富と幸運の神である。最高神ゼウスの子にして知略に優れた青年神は、商人や旅人、賭博師らを守護する顔も持つ◆ヘルメスは生まれた日、異母兄の太陽神アポロンの牛を盗み、証拠隠滅する。激怒したアポロンにゼウスの前へと突き出されると、こう弁明した。「うそのつき方も知らない」◆「息を吐くように、うそをつく」ある母親が最愛の息子の行動を評した。彼は普通の会社員である。パチスロから、スマホで簡単にできるオンライン競馬の泥沼に陥り、場当たり的なうそをついては借金を重ねた◆母は、息子の債務整理を依頼した司法書士に「全国ギャンブル依存症家族の会」を紹介される。ギャンブル依存症は世界保健機関(WHO)認定の病気と知った。息子は回復施設のプログラムで社会復帰をめざす◆依存症は、自身がそれを認められない「否認の病」といわれる。ギャンブルの借金を家族が肩代わりすると「自身で責任を取る経験」が奪われ回復が遠ざかるという。意志の強弱に関わらず、条件がそろえば誰もがなり得る病である。その知識の啓発や予防教育、当事者・家族の支援に社会全体で取り組みたい。(川)