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【主張】後絶たないカスハラ 自治体でも防止条例制定の動き
顧客や取引先などからの理不尽な要求や悪質なクレームといった著しい迷惑行為を指す、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が後を絶たない。いかに防ぐか、国はさらなる対策を検討すべきだ。
東京都は22日、カスハラ防止対策に関する検討部会を開き、都独自の条例制定に向け内容のたたき台を示した。カスハラの定義や禁止する旨を条例に明記した上で、カスハラに該当する言動を例示したガイドラインを作成する方針だ。
カスハラの実例には、暴言や長時間の拘束、土下座の強要のほか、インターネット上に氏名をさらすといった脅迫などがあり、対応した働き手が心身に不調を来して休職や退職に追い込まれるケースも出ている。誰もが安心して働ける環境づくりは急務だ。
国は2020年に、企業などが負う安全配慮義務の観点から、カスハラ被害を受けた従業員のケアなど望ましい対応を示した指針を策定し、22年には迷惑行為への対策マニュアルを作成するなど、事業主に対策強化を促してきた。
ただ、個々の企業内の対応だけでは限界があるのも事実だ。顧客や取引先は経営に欠かせない存在で、対応を誤れば悪評や顧客離れにつながる恐れもある。強い姿勢を示しづらい状況を踏まえねばならない。
東京都は条例やガイドラインの中で、カスハラ防止の基本理念とともに、都・消費者・事業者などの責務も示し、実効性の確保をめざす。消費者を含め社会全体の共通理解を広げ、対策を促す姿勢は参考になる。
一方で、顧客の声を抑制しない視点も重要だ。消費者としての声は商品やサービスの改善などに役立つ。企業などに適切に意見を伝えるための消費者への啓発強化も必要だろう。
公明党は今月、党内にカスハラ対策検討委員会を設置し、19日に初会合を開いた。現場の意見を踏まえた取り組みを一層進め、消費者と事業者が対等な立場に立ち、商品やサービスの価値を高めていける社会の実現をめざしたい。