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【主張】外国人の育成就労制度 人権守り働きやすい環境整備を
日本で働く外国人の人権を守り、共生社会の実現につながる環境整備を進めるため、今国会での成立をめざしたい。
政府は15日、外国人材の受け入れ制度を抜本的に改める関連法案を閣議決定した。現行の技能実習制度を廃止し、就労を通じた人材の育成・確保を目的とする新制度「育成就労制度」を創設する。
1993年に創設された技能実習制度は、人づくりによる国際貢献を目的として途上国の発展を後押ししてきた一方で、国内では安価な労働力確保の手段として使われてきた面がある。
実習生本人の意向による転籍(転職)は原則、認められていないことから雇用主の立場が強く、賃金未払いや暴力・ハラスメントなどの人権侵害を受けるケースがあり、過酷な労働環境に耐えられず、失踪する実習生も相次いでいる。
そこで新たな育成就労制度では、一定水準の技能と日本語能力があることを条件に、1~2年働けば、同一業種での転籍を認めることとする。労働者の権利保護の観点から歓迎したい。
新制度のもう一つの特徴は、日本での長期就労につながる「特定技能制度」への移行を見据えた設計にしたことだ。
新制度では、3年間で一定の知識・技能が必要な特定技能1号の水準に育成することをめざす。新制度と特定技能制度の対象分野や職種を原則そろえ、一体的に運用する。
1号を取得すれば、さらに最長5年間、働くことができ、その間に、より熟練した技能を持つ2号を取得すれば、家族の帯同や事実上の永住も可能になる。
外国人にとっては、日本でのキャリアアップの道筋が分かりやすくなる。日本が「選ばれる国」になる上で重要な改革だろう。
人手不足が深刻化する日本にとって、経済活動を維持するには外国人の受け入れが必須になりつつある。国際的に人材獲得競争が激しくなる中、外国人から見て働き先として魅力のある環境を整えていかなければならない。