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安全運転への支援、移動手段の確保を
高齢ドライバーの事故増加
高齢ドライバーによる交通事故が相次ぐ中、政府は、公明党の主張を受け、高齢者などの安全運転支援と運転免許証を返納した後の移動支援の強化に動き出した。公明党が訴える「新たなモビリティ(移動)サービス社会」とともに解説する。
免許返納は過去最多
地方ほどマイカーに依存
これに伴い、高齢ドライバーによる交通事故も目立ってきた。警察庁によると、75歳以上の高齢者が18年に起こした死亡事故は、運転免許証を保有する10万人当たりの換算で8.2件に上る。これは75歳未満の約2.4倍だ。
事故原因の内訳は、運転操作の誤りが全体の30%を占める。このうちブレーキとアクセルの踏み間違いに起因する死亡事故の割合は、75歳未満が全体の1.1%であるのに対し、75歳以上は5.4%に達している。
こうした中、免許証を自主返納する高齢者が増えている。警察庁によると、18年に免許証を自主返納した75歳以上の人は29万2089人と過去最多を記録した。
一方、マイカーが日常生活に欠かせない高齢者も依然として多い。
19年版の「高齢社会白書」によると、60歳以上の人に外出時の移動手段を複数回答で聞いたところ、「自分で運転する自動車」が56.6%と最も多かった。
自分で運転する車を外出手段とする人に利用頻度を尋ねた調査では「ほとんど毎日」は67.4%で、80歳以上でも5割以上の人が同様に回答した。
「ほとんど毎日」と答えた人は、大都市で50%だったのに対し、町村では75.5%と高い。地方ほど、移動手段をマイカーに依存している実情が浮き彫りとなっている。
中山間地では自動運転車も
自動車による事故を防ぐため、国や自動車業界は1991年度から、安全運転を支援する技術開発と実用化を進めている。
その代表格が「衝突被害軽減ブレーキ」だ。カメラやレーダーが前方の障害物を検知すると、ブレーキによる制御などで衝突時の被害を軽減するというもの。
交通事故総合分析センターによると、同ブレーキ搭載車の対四輪車の事故率は、未搭載車の約半分に抑えられたという。乗用車の標準装備とするメーカーが相次いでおり、新車搭載率は77.8%(2017年)に上っている。
また、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故対策として、急発進を防ぐ「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」もある。同装置の新車搭載率は65.2%(同)まで達している。
政府は、この衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置を搭載した車を「安全サポート車」と位置付け推奨している。
一方、高齢者の移動手段の確保策として、国土交通省などは、人口減少で鉄道やバスなどの公共交通網が衰退する中山間地域で、自動運転の車両を走らせるなど、新たな移動サービスの導入に向けた実証実験を進めている。
今後、ますます技術革新が見込まれるAI(人工知能)や自動運転などの先端技術を活用した取り組みを加速させることで、高齢者の“生活の足”の確保にとどまらず、観光地の移動手段として地域振興への活用も期待されている。
公明提唱「新たなモビリティ(移動)サービス社会」
公明党は、高齢者の移動手段の確保と安全運転支援を積極的に推進してきた。
5月には、政府に申し入れた提言「成長戦略2019」の中で、高齢者の特性に応じた限定条件付き免許の導入をはじめ、コミュニティーバスやデマンド(予約)型乗合タクシーといった「地域公共交通ネットワーク」の確保などを求めた。
これを受け政府は6月21日に閣議決定した成長戦略に、安全運転支援機能が付いた車種に限定する、高齢ドライバー専用の新たな運転免許の創設に向けた検討を進めることなどを盛り込んだ。公明党の主張を反映したものである。
また、参院選政策集(マニフェスト2019)で公明党は、「新たなモビリティ(移動)サービス社会」を提唱、高齢者の移動手段の確保を国家プロジェクトとして取り組むよう主張している。
具体的には、地域公共交通ネットワークのさらなる充実を図るとともに、安全対策が強化された車の買い替えは高齢者にとって経済的負担が大きいことから、「安全運転サポート車」やペダルの踏み間違いに対応する装置の購入費を高齢者に限定して支援するといった政策を提示している。