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2024年3月19日

能登地震 被災者に銭湯を無償提供

断水地域で地下水活用し再開  
若者ボランティアが運営 
新谷さん「小さな希望になれたら」 
石川・珠洲市

能登半島地震の影響で今もほぼ全域で断水が続く石川県珠洲市。同市野々江町の沿岸部に位置する公衆浴場「海浜あみだ湯」は建物が被災しながらも地下水をボイラーで沸かし、1月中旬に奥能登地域でいち早く営業再開した。これまで被災者への無償提供を続けている。運営しているのは、地域おこし協力隊を機に移住してきた若者や地元高校生ら有志。長い避難生活が続く被災者の心に、銭湯を通じた支援のぬくもりが届いている。

お風呂上がりにさっぱりとした様子でほほ笑む被災者

午後6時。あみだ湯のロビーは入場制限の順番を待つ被災者でいっぱいになっていた。「お待たせしました!」。地元の県立飯田高校の生徒や若い女性スタッフが番台から笑顔で迎え、手際よく案内する。

利用した山田幸子さん(75)は「いい湯加減だった」とひと言。一部損壊した自宅で在宅避難し、家の周りには津波で流れ着いた家財が今も残ったままだ。それでも「湯に漬かると幸せな気分になった」と顔を赤めて笑みを浮かべた。

自宅が半壊した井田浩市さん(62)は「若い人が本当にテキパキ動いてくれている。頼れる知人がいるが、迷惑を掛けられないので、こういう場はありがたい」とかみしめた。

珠洲市では地震発生から2カ月が過ぎた今も、市内全域での断水の解消はめどが立たず、風呂やトイレが使えない不自由な生活が続いている。一方、市内の2次避難が進んで当初よりあみだ湯の利用者が落ち着いたことから、現在は支援関係者にも曜日を指定して1人500円で提供している。

今月には岐阜県下呂市から思いがけない支援も。名湯「下呂温泉」の源泉がタンクローリーで計3回にわたって約15トンずつ届けられ、1日、8日、15日の3日間で提供した。

ボイラー室でまきを入れて火をたく新谷さん

高齢のあみだ湯のオーナーから経営を実質的に引き継いでいる一般社団法人「仮かっこ」の新谷健太代表理事(32)は「大きなことはできないが、復興への活動につながる癒やしを届けられたら」と語る。

新谷さんは発災直後に断水が長期に及ぶ情報を耳にし、あみだ湯が元々、くみ上げた地下水をボイラーで沸かしていたことから“一日でも早く銭湯を再開したい”と仲間と共に決意。早速、建物を点検すると、井戸のくみ上げ設備などが破損していたものの、幸いにも建物自体に大きな被害はなかった。「これなら設備さえ直せれば、営業できるかもしれない」。地域の活動でつながっていた飯田高校1年の生徒らが協力してくれ、何とか営業再開と避難者への無償提供にこぎ着けた。

学生時代に初めて訪れた珠洲市で、豊かな自然と優しい能登の人柄に心を奪われたという新谷さん。以来、同市に関心を持ち続け、2017年に地域おこし協力隊として移住。翌年、あみだ湯の近くにゲストハウスを開業し、あみだ湯を手伝うようになった。

新谷さんは「珠洲市の街の形を残すための小さな希望になりたい。一番心を痛めているのは、ここで生まれ育った方々なので、寄り添い続けていきたい」と力を込めた。

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