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【主張】犯罪被害者支援 事件直後の対応、弁護士が代行へ
犯罪被害者や遺族が収入や資産などにかかわらず、必要な法的サポートを受けられるよう、支援体制を拡充する必要がある。
政府は、弁護士に依頼する資金を確保することが難しい被害者らが、原則無料で弁護士によるサポートを受けられる新たな制度を創設する方針だ。5日に閣議決定した「総合法律支援法改正案」に盛り込み、今国会での成立をめざす。
新制度の対象は、犯罪で命を落とした被害者の遺族と、性犯罪をはじめ心身に大きなダメージを受けた被害者を想定。各地にある日本司法支援センター(法テラス)が弁護士を紹介し、包括的な支援を行う。
具体的には、担当弁護士が、加害者に損害賠償を請求するといった民事に関わる手続きや、被害届の提出など刑事に関わる手続き、行政への給付金申請などを代行。捜査機関による事情聴取への同行や報道機関への対応なども行い、幅広くサポートする。
法務省によると、被害者や遺族は犯罪に遭った直後から、捜査機関とのやりとりや加害者側との示談交渉などに追われることが多い。被害によって働けなくなり収入が途絶えて、弁護士費用などを賄えないケースもある。
弁護士が事件直後から、苦しんでいる被害者らに寄り添い、各種機関への対応を一括して請け負っていく意義は大きい。
弁護士による被害者支援はこれまで、法テラスを通じて、民事に関わる弁護士費用の立て替えなどを中心に行われてきた。ただ、被害者側が裁判で敗訴したり、賠償を受けられることが決まっても、加害者側に資産などがなく金銭が支払われないことがあり、立て替え費用の支払いが生活を苦しめるケースがあった。
新制度の活用で、被害者らの精神的、経済的な負担の軽減につなげたい。
改正案では、施行期日について「公布後2年以内」と定めている。被害者らの支援拡充に向け、改正案の早期成立を期し、新制度の創設をできるだけ前倒ししてもらいたい。