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高齢化進む公営住宅に“交流の場”
各地の取り組みから
全国で約210万戸ある公営住宅では、住民の高齢化が進み、孤立・孤独の防止が大きな課題となっている。そうした中、公営住宅の空き部屋や集会所などを交流の場として活用し、コミュニティー(共同体)を活性化させようとする動きが各地で広がっている。公明党の地方議員も各地で推進している。
■「健康団地」めざし開設
神奈川県
万騎ケ原団地内で行われた高齢者向けの講習会の様子=3月8日 横浜市
「最近では電子マネーの購入を指示する特殊詐欺が増えているので注意を!」。横浜市旭区の万騎ケ原団地の一室では「特殊詐欺から身を守ろう!」と題した講習会が行われていた。ボランティアの講師がスライドや動画を使って、被害防止の方法を分かりやすく説明すると、参加者は大きくうなずいた。
講習会が行われた部屋は、団地内にある「コミュニティルーム」だ。地域に開かれたコミュニティーづくりの活動拠点として、団地の建て替え工事と併せて、昨年3月に整備された。建て替えに伴って同ルームを併設したのは県内で初めて。
■地域の社会福祉法人が運用
同ルームは、社会福祉法人「清正会」が運用を担う。昨夏から子どもを対象とした硬筆教室や高齢者向けのお茶会などを主催してきた。いずれの催しも、団地の入居者だけでなく、地域の住民も参加できる。同法人の職員は「団地の内外の人々が交流できる機会につながっている」と話す。
この社会福祉法人は、同エリアの地域包括支援センターも担っており、県公共住宅課の担当者は「地域に根差した社会福祉法人が『コミュニティルーム』を運用することで、介護や病気など課題を抱えた住民に寄り添うことができる」と期待を込める。
この万騎ケ原団地の取り組みは、公明党神奈川県議団が推進して、同県が2013年度から始めた「誰もが健康で安心して生き生きと生活できる『健康団地』」をめざす取り組みの一環だ。入居者、県、市町、福祉団体などが連携して、近隣住民を含めた多様な交流やコミュニティー活動の活性化を進める。
具体的には、「コミュニティルーム」の整備のほか、団地の余剰地や空き施設(店舗)への福祉事業者の誘致、空き住戸を活用したコミュニティー活動の後押し、子育て世代の入居推進などに取り組んでいる。
■集会所で民間団体が催し
東京都
「10の筋力トレーニング」に励む参加者ら=3月4日 東京・板橋区
東京都は、多世代が集う都営住宅をめざし、集会所などを誰もが集う居場所づくりに活用する「東京みんなでサロン」事業を22年度から本格的に実施している。社会福祉法人やNPO(非営利団体)などの民間団体が地域交流のきっかけとなる取り組み(営利目的などのものは除く)を行う場合、その団体と利用可能な集会所を都住宅供給公社がマッチングする。都議会公明党が推進している。
板橋区の成増五丁目第2アパートにある第3集会所も、その一つだ。同集会所では毎週月曜、介護予防や転倒予防に効果がある「10の筋力トレーニング」が実施されている。近隣住民も参加して、毎回30人以上が集い、地域の交流拠点にもなっている。参加者からは「体も鍛えられて、知り合いも増えた」と喜ばれている。
主催する「板橋区高齢者『10の筋トレ』成増教室」の小野ミチ子リーダーは「参加者同士で新しいつながりが生まれている」と手応えを語る。区の担当者は「周辺に開催できる場所がなかったから、都営住宅の集会所を使えるのは、ありがたい」と話す。
東京都によると、22年度までに31カ所の集会所が同事業で活用されており、子ども食堂や高齢者向けの交流会など内容は多岐にわたるという。都は30年度までに100カ所への拡充をめざしている。
■国交省、「手引き」で好事例紹介
国土交通省は、22年3月に「住宅団地再生の手引き」を作成。コミュニティーなど九つのテーマについて、好事例とともに紹介し、自治体の取り組みを後押ししており、各地で、公営住宅の空き部屋を利用する動きは広がっている。
例えば、大阪府では、府営住宅の空き部屋を子どもの居場所や福祉相談所、生活に課題を抱える若者向けのシェアハウスとして整備するなど、地域の課題を解決する一助として活用している。