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【主張】読書のバリアフリー 全ての人に活字文化の恵みを
視覚障がいや発達障がいのある人たちの読書環境を整える「読書バリアフリー法」(議員立法)が、先の通常国会で成立した。誰もが等しく書物に触れ、楽しみ、感動できる社会を実現する契機としたい。
「『見える幸せ、読める喜び』の一部を視覚障がい者に分けて」「読むことは生きることであり、情報は命」――。読書が困難な当事者の切実な訴えである。公明党はこうした声を重く受け止め、法制定を粘り強く主導してきた。
同法は、障がいの有無にかかわらず「全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受する」社会の実現を目的に掲げている。
現在、国内の点字図書や録音図書は約30万タイトル。国立国会図書館が有する1100万タイトル超と比べわずかで、音声で読み上げられる電子書籍も一部にとどまる。
このため同法は、点字・録音図書や、音声読み上げ対応の電子書籍の普及を国や自治体の責務とした。国には読書環境の整備に向けた基本計画の作成と財政措置を義務付けている。書籍を持つのが困難な肢体不自由者も含め、当事者の多様な声が施策に反映されるよう求めたい。
特に期待されるのが、電子書籍やインターネットを活用した「聞く読書」だ。電子データ化されたものは、自宅にいながら誰もが利用できる利点がある。より使いやすい端末の開発や普及、機器の活用法を習得するための体制の充実を進めたい。
利用者が楽しみを広げるには、作品数を増やすことが何より重要だ。
しかし、出版社側から障がい者や点字図書館に対して、点字や音声に変換しやすい本や雑誌の電子データの提供が十分に進んでいない実情がある。背景には、重い事務負担やデータ流出への懸念があるという。出版業界の理解が広がるよう、官民一体で環境整備を加速してほしい。
同法は自治体に、地域の実情を踏まえた施策を進める努力義務を課した。例えば過疎地では、訪問や郵送によるサービスを充実させるなど、実効性ある取り組みが重要だ。図書館への、点字図書や活字の大きな拡大図書の導入も大切である。公明党の地方議員もしっかり後押ししたい。