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【主張】過去最少の出生数 安心して産み育てられる社会に
少子化が一層加速している深刻な事態が浮き彫りになった。政府は、子どもを持つことに不安や負担を感じる要因を一つ一つ取り除き、希望する人が安心して子どもを産み育てられる社会へ、危機感を持って取り組んでいかねばならない。
厚生労働省が先月27日に発表した人口動態統計の速報値によると、2023年の出生数は75万8631人で過去最少を更新した。政府の将来推計では、75万人台になるのは35年と見込まれており、想定より10年以上も前倒しになっている。23年の婚姻件数は48万9281組となり、戦後初めて50万組を割った。
言うまでもなく結婚、出産は個人の自由な意思に基づくものであるが、希望する人が諦めざるを得ないような状況は変えなくてはならない。結婚や子育てに対する願いをかなえられるよう、社会全体で応援する仕組みを整える必要がある。
少子化の背景には未婚化・晩婚化、経済的な事情や、依然として家事・育児の負担が女性に偏っている現状などが指摘されている。
経済的な理由で結婚や出産をためらう若い世代に対しては、雇用の安定や所得向上を図り、将来の見通しを持てるようにすることが重要である。
公明党は「子育て応援トータルプラン」の柱の一つに若者の経済的基盤の強化を掲げ、政府が昨年末に決定した「こども未来戦略」に反映された。若い世代の賃上げや処遇改善に、官民挙げて取り組むべきだ。
男女間の役割分担意識の是正も大切だ。男性の育児休業の取得率は2割にも達していない。男性の積極的な家事・育児参加を促すとともに、女性が出産後もキャリアに支障なく働き続けられるよう、仕事と育児の両立を支える環境のさらなる充実が求められる。
24年度からは、児童手当の抜本拡充や親の就労要件を問わず保育所を利用できる「こども誰でも通園制度」の創設などを盛り込んだ「加速化プラン」が始まる。
前例のない思い切った対策に取り組み、少子化の流れを反転させたい。