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2024年2月29日

能登地震で直面、災害時のトイレ対策

水分控え、関連死リスク増 
不衛生で利用ためらう避難者

能登半島地震では、陸路の寸断や断水・停電の長期化によってトイレが使えない状況が長引き、避難所などの衛生問題が深刻化した。発災後の現地の状況を伝えるとともに、『トイレからはじめる防災ハンドブック』の著者であるNPO法人「日本トイレ研究所」の加藤篤・代表理事に、必要な対策について聞いた。

発災から6日目、石川県能登町などを回った公明党「令和6年能登半島地震災害対策本部」の大口善徳本部長(衆院議員)らは愕然とした。道中で立ち寄ったトイレの便器が、汚物で埋め尽くされていたからだ。同行した塩田博昭事務局長(参院議員)は「またいで使うことができないほどだった」と振り返る。

発災3日目、いち早く珠洲市や輪島市に入り支援活動を行った認定NPO法人「AAR Japan(難民を助ける会)」の大原真一郎氏も、悲惨な光景を目の当たりにした。珠洲市のある小学校体育館には、300人を超える地域住民らが身を寄せていた。体育館のトイレに入ると、便器に非常用トイレのビニール袋は設置されていたものの、汚物であふれていた。不衛生なトイレに行かなくて済むよう、食事や水分摂取を我慢する人も出ていた。「特に女性にその傾向が強く、2日間トイレに行っていない人もいた」と言う。

ある避難所では、仮設トイレが届くまでの10日間、300メートルほど歩いた所にある海辺で用を足すしかなかった。「介護が必要な高齢者は、避難所の一角をゴザで仕切り、置いた容器に出してもらっていた」とは、奥能登に入った被災者支援団体「緑水の森支援活動」の大谷哲範代表の証言だ。

劣悪なトイレ環境は、避難生活のストレスを高めたり、急性胃腸炎を招くノロウイルスなどの集団感染の原因となるだけではない。災害関連死の危険性も高める。避難者が水分摂取を控えるため、血液中に血の塊ができ、肺に詰まって重篤な症状を引き起こす「エコノミークラス症候群」を誘発するからだ。

自治体の75%「計画なし」

内閣府は、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった過去の教訓を踏まえ、2016年に「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」を公表し、自治体に対策を呼び掛けているが、取り組みは低調だ。

NPO法人「日本トイレ研究所」が昨年、全国の自治体を対象に実施したアンケート結果によると、災害時のトイレ確保・管理計画を「策定している」と答えた自治体は24.1%で、「策定していない」が75.9%に上った。災害用トイレの備蓄状況についても、最大規模の災害が発生した場合に想定される避難者数に対して「足りる見込み」と答えた自治体は30.7%にとどまっていた。

責任者の明確化 平時から
NPO法人日本トイレ研究所 加藤篤 代表理事

NPO法人日本トイレ研究所 加藤篤 代表理事

――災害時のトイレ対策が進まない要因は。

行政の責任者が不明であることが大きい。例えば、下水道は国土交通省、感染症は厚生労働省、し尿処理は環境省など、トイレ対応は非常に多くの部署にまたがる。トイレ利用を確保する責任者がいなければ、事前の備えも進みにくくなる。

一方、市民からすると、排泄はデリケートな問題であり、ある意味“タブー”な話題だ。普段から話さないことは、いざ災害になっても声に出しづらい。そのため、困っている状況が政治に届きにくい面があった。

――能登半島地震の教訓をどう生かすべきか。

3点訴えたい。まず平時からトイレ対策の責任者を明確にすること。誰にトイレの困り事の声を届けたらいいのか。誰が災害時にトイレ関連の物資を調達するのか。行政はもちろん、企業や病院などにおいても、その“司令塔”を決めるべきだ。

二つ目は計画を作ること。“丸腰”で対応できるとトイレ対策を軽んじていないか。どれくらいの人が被災したら、どれくらいの物資が必要か。その段取りは。時間経過に応じた計画が必要だ。

最後に備蓄だ。今回の地震で、外から物資を持ち込むのが、いかに困難かを学んだはずだ。災害時の協定などがあったとしても、その場に“モノ”がないと対応できない。

命と尊厳守る環境整えよ

――国や自治体に求めたいことは。

国は自治体に対し、災害時のトイレの確保・管理計画を作るよう呼び掛けている。そうであるならば、国が進捗状況をしっかり把握し、公表すべきだ。

災害対策基本法には、避難所の生活環境について「良好な居住性の確保」に努めるよう明記されている。運営主体である自治体には、命や尊厳にも関わるトイレ環境を整備する責務があることを強く認識してもらいたい。

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