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【主張】地区防災計画 地域総がかりで命守る備えを
地域総がかりで災害への備えを充実させたい。
閣議決定された2019年版「防災白書」によると、「地区防災計画」の策定に取り組んでいる地域が、18年4月現在で全国3206カ所に上っていることが判明した。計画策定に対する機運の高まりが感じられる。
地区防災計画は、災害が起きた時に、いつ、どう動くのか、事前に何を準備するかなど、地域住民が自発的に立てる計画のことだ。公明党の推進で13年に成立した改正災害対策基本法に基づく。
最大の特徴は、計画を立てる単位に制限がない点にある。町会や自治会をはじめ、マンション管理組合、企業、NPO法人、商店街、学校、医療・福祉施設などが想定されている。
主な防災計画には、国が立案する「防災基本計画」と、それを基に自治体が立てる「地域防災計画」がある。
しかし東日本大震災では、地震や津波で行政機能がまひする中、地域コミュニティーを中心とした共助が、避難所運営などで重要な役割を果たした。
今後、発生が危惧されている首都直下地震や南海トラフ地震などの大規模災害に備え、特に自助と公助をつなぐ共助を強化する手だてが欠かせない。地区防災計画を整備する意義はここにある。
注目したいのは、内閣府の分析で、地区防災計画を策定した166事例のうち、市町村の働き掛けで計画の策定に動き出したケースが全体の7割に上っていることだ。
例えば、岐阜県下呂市小坂町にある落合地区は16年度、国のモデル事業として、学識者がアドバイザーとなり地区防災計画を策定した。
同地区は人口約200人、高齢化率50%の集落だ。当初は「災害は人ごと」と議論が進まなかったが、災害リスクを洗い出す中で住民の意識が変化。少人数で逃げるため3~5世帯ごとに声を掛け合って避難する発想が生まれ、避難訓練の充実が図られた。その結果、昨年の西日本豪雨では、早い段階で住民が安全な場所に避難できたという。
アドバイザーの派遣を広げるなど、政府も支援する方針だ。地域の主体的な取り組みを後押ししたい。