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水質汚染の不安払拭へ
沖縄で高濃度の有機フッ素化合物を検出
求められる基準値の策定
高まる米軍基地への懸念 原因究明へ継続調査必要
沖縄県内で、浄水場の水源となっている河川などから有機フッ素化合物が高い濃度で検出されている。専門家がこのほど、沖縄県宜野湾市と南城市で調査結果を公表する報告会を開き、住民らに健康への影響などを説明した。国内の米軍基地や返還地、その周辺では、米軍基地由来と思われる環境汚染がたびたび発生している。今回の問題について、環境汚染の防止と県民の不安払拭に尽力する公明党の取り組みを報告する。
「現段階では、健康影響があるとは考えにくい。安全に水道水を利用できる」。報告会が開かれた宜野湾市中央公民館で、マイクを握る京都大学の小泉昭夫名誉教授の声に、参加者が真剣に耳を傾けていた。
報告会では、沖縄県内で水道水を利用している約100人の住民から採血した調査結果を紹介。宜野湾市民の血液1ミリリットル当たりPFOSとPFOAを合わせて最大45ナノグラム(ナノ=10億分の1)が検出されたことを明かした。
小泉氏は、米国の環境保護庁が定める健康勧告値を参考に「健康影響があるレベルではない。パニックにならず、冷静に受け止めてほしい」と結論付けた。その一方で小泉氏は、日本では有機フッ素化合物に関する水質基準値が定められていないことを問題視した。
また、汚染源について米軍基地内での泡消火剤などの利用を懸念した小泉氏は「大気を経由した汚染も考えられるため、継続して調査を行いたい。汚染源の究明へ国の支援が求められる」と強調した。
血液検査の調査に協力した30代女性は、「テレビや新聞でいろいろな情報が伝えられ、とても不安を感じていた。報告を聞き、ひとまず安心した」と語った。
大口厚労副大臣(中央右)に要請する、かわの氏(右端)と党沖縄県本部のメンバー
公明の要請受け7月に検討開始
問題の発端は、県が4月に発表した2018年度の水質調査だ。調査結果によると、宜野湾市などに水道用水を供給する北谷浄水場の水源である比謝川をはじめ、調査した32地点のうち23地点で米国の勧告値を超える有機フッ素化合物を検出。米軍普天間飛行場(宜野湾市)周辺の湧水地・喜友名泉では、1リットル当たり2000ナノグラムと高い数値だった。
こうした調査結果を重く見て、公明党沖縄方面副本部長のかわの義博参院議員(参院選予定候補=比例区)は11日の参院厚生労働委員会で、有機フッ素化合物についての水質基準値を設定する必要性などを訴え、大口善徳厚労副大臣(公明党)から「検討を進め、来年4月ごろまでに方向性を出したい」との答弁を引き出した。さらに、党沖縄県本部が19日、かわの氏と共に関係省庁へ対策を求める要請を行った。要請を受けて、厚労省は、7月に同省の検討会で議論を始めることを表明した。
政府が水質基準値の策定へ前向きな姿勢を示したことについて、小泉氏は「安堵している。対策の広がりを期待したい」と述べた。
有機フッ素化合物
炭素とフッ素が結合した有機化合物の総称。多数の種類があり、水や油をはじき、熱に強いPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(パーフルオロオクタン酸)は、消火剤や調理用器具などに広く使用されてきた。毒性や発がん性があるため、2009年にPFOS、今年5月にPFOAがそれぞれストックホルム条約で製造と使用、輸出入が原則禁止になっている。