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【主張】自治体間支援 能登地震でも力を発揮、一層深化を
能登半島地震の被災地では、復旧や被災者支援に関わる自治体業務が多岐にわたる。自らが被災しながら従事する職員もいて、心身共に疲労はピークに達していよう。こうした現場を支えているのが、全国から派遣された自治体職員だ。
総務省によると、石川、富山、新潟3県の18市町への応援のため連日、57の都道府県、政令市から派遣された1000人以上の自治体職員が活動している。助け合いの力を発揮し、避難所運営や罹災証明書の発行業務などに当たる姿が、現地に勇気を与えているに違いない。
著しいマンパワー不足に陥る中、職員確保の役割を主に担っているのが、被災自治体と支援する自治体を組み合わせる「対口支援」方式だ。「対口」は中国語でペアを組むことを意味する。2008年の四川大地震で、中国政府が支援役の自治体を割り当てた復興策がモデルになった。
日本では、11年の東日本大震災で関西広域連合が被災県ごとに担当を決め職員を派遣するなどの実施例があり、総務省が18年3月に「応急対策職員派遣制度」として制度化。同年の西日本豪雨では延べ1万5000人以上が派遣された。
この方式は、被災自治体の一部に支援が偏ることを防ぐだけでなく、集中的、継続的に現地のニーズに対応することができる。職員を派遣する自治体にとっても、現地で得た経験や教訓を、地元の防災施策に生かすことができるメリットもある。
近年の自然災害の頻発化に伴い、自治体間連携は強化され、被災地をサポートする共助の枠組みは定着してきたと言える。全国知事会や、市区町村の災害時相互応援協定などを通じた人的派遣もあり、重層的な支援を可能にしている。今回で見えてきた新たな課題を教訓にしつつ、相互支援の取り組みを深化させたい。
一方、災害時に応援職員を受け入れる体制の整備も必要だが、国が市区町村に求める「受援計画」の策定率は7割に満たない。抜かりない備えを急ぐべきだ。