ニュース
山口代表の参院代表質問(要旨)
能登半島地震
仮設住宅、長期居住も可能に
能登半島地震の発災から1カ月がたった。私は、先月21日、甚大な被害を受けた輪島市、穴水町、内灘町の調査に入った。避難所や、復旧の支援に当たる現場では、多くの方々が「先が見えない」不安を抱えていると痛感した。今、大切なことは、被災者お一人お一人が生活の再建、なりわいの再建をイメージできるよう具体的な道筋を示し、不安を抱える被災者に希望を届けることだ。
地域の産業も壊滅的な被害を受けており、事業再建やなりわい支援、観光資源の再生に向け、中小企業の施設などの復旧支援や、事業再開・継続への金融支援、旅行需要喚起策を含めた観光の復興にスピード感を持って取り組むとともに、雇用の維持への支援にも万全を尽くしていただきたい。
現地のニーズはさまざまであり、状況も刻々と変化しており、対策が現場とマッチしているか、自治体と緊密に連携しながら、継続的にフォローアップしていくことが必要だ。
今回の地震災害が、半島という地理的状況に加え、険しく入り組んだ地形での陸路の寸断など被害の特殊性を鑑み、被災地の状況を踏まえた柔軟な支援が必要だ。
住まいの確保
石川県は、3月末までに、仮設住宅や公営住宅など、約1万8000戸を提供するとし、一部が形を見せ始めた。希望する人が入居できるように必要戸数の確保とともに、入居者のニーズとミスマッチがないように配慮しつつ、早急な建設を求める。
仮設住宅の建設に当たっては、過去の大規模災害の知見も踏まえ、入居者のニーズを取り入れた仕様が求められる。入居希望者には高齢者が多く、2年間での自立が難しいため、被災自治体の要望を踏まえ、長期にわたって居住できる仕様にするとともに、コミュニティーを大切にする人々の気持ちに配慮した形態で進めることが重要だ。
降雪・寒冷地仕様は当然のこと、高齢者・障がい者らに配慮したバリアフリー型にすることも大切だ。加えて、孤独死対策としての見守り体制の強化や、集会所の建設なども検討が必要だ。
さらに、仮設を出た後の生活再建を焦点に、ワンストップ相談窓口の開設や、今後の生活・住まいの検討に役立つ「再建プランのしおり」の作成など、被災者に寄り添った再建支援が大切だ。
国挙げて支える
能登半島地震は、被害の甚大さから本格的復旧・復興に時間がかかることが予想される。国を挙げて万全な支援を講じていかなければならない。
輪島市を訪れた際、福祉事業者とボランティア団体が共同で福祉避難所を運営しており、被災者に寄り添った支援がされていた。別の避難所ではDMAT(災害派遣医療チーム)や介護職員が活動されている様子を拝見し、避難者の安心感が伝わってきた。
支援する側の皆さまは、寝泊まりする場所がないなど心身ともに負担が大きく、休息の時間、場所の確保や健康管理などの配慮が必要だ。避難所運営体制の強化とともに、応援職員の体制強化や支援拠点の確保など支援に携わる全ての人への継続的な支援のためのサポートが極めて重要だ。
今後の被災地の復旧やきめ細かな被災者支援のためには、災害ボランティアや民間支援団体の力と知見は欠かせない。石川県の受け入れが始まったが、被災自治体の円滑かつ十分な受け入れ体制を支援するとともに、被災地への安全で十分な移動体制も構築すべきだ。
運輸の安全強化、取り組め
羽田空港における航空機事故は、海上保安庁の航空機が被災地に物資を届ける最中に起きた。こうした事故を防ぐためにも、まずは徹底的に事故原因を究明し、再発防止策を確立していただきたい。今からでもできる対策は順次進めるべきだ。
万が一、人的ミスが起きても、事故につながらない仕組みの構築が重要だ。航空機や航空管制へのデジタル技術の活用など、新しいテクノロジーの導入が不可欠であり、技術開発に向けて民間や国際社会と連携しながら支援が必要だ。
航空分野に限らず、あらゆる運輸事業者に対し、自主的な輸送の安全性の向上を進める、運輸安全マネジメント制度があるが、今回の事故を教訓として、事業者の安全管理体制の評価や啓発の強化に一層取り組むべきだ。
政治とカネ
パーティー巡る問題、再発防止を徹底せよ
現職国会議員が逮捕されるなど、自民党の派閥による政治資金パーティーを巡る問題は、国民の生活感覚から大きくかけ離れており、断じて許されるものではない。国民の信頼を取り戻すためには、自民党内の派閥のあり方だけではなく、二度とこうした問題が起きないよう、政治資金規正法を改正し、再発防止を徹底することが、圧倒的な国民の声に応える道ではないか。首相のリーダーシップの下、今こそ自民党が自浄能力を発揮して、政治改革を主導すべきだ。
実効性ある法改正の実現に向け、衆院で過半数を持つ自民党がどのような改革案を示すのか、国民は注目している。自民党の総裁である首相の断固たる決意を、この場で国民に示していただきたい。
持続的な賃上げ
「地方版政労使会議」活用を
デフレ脱却へ、物価高を上回る賃上げ・所得向上の流れをつくり、「物価高を乗り越えられる家計」を実現していくことが肝要だ。カギは、さらなるベースアップの実現であるとともに、地域経済を担い、雇用の7割を支えている中堅・中小企業が持続的な賃上げを行えるかどうかにかかっている。そこで公明党は昨年10月に「中小企業等の賃上げ応援トータルプラン」を提言し、既に多くの項目が前進している。
例えば、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」作成、最低賃金の引き上げ支援、省力化や生産性向上に効果がある製品を申請や手続きなしにカタログから選ぶようにして導入するための補助金、赤字企業でも「賃上げ促進税制」を活用できる「繰越控除制度」を創設する方針も決定した。最も大事なことは現場で活用してもらうことだ。そのために、わが党が主張し実現が決まった「地方版政労使会議」を有効に活用し、支援策の普及・活用を後押ししていただきたい。
支援策の相談から活用まで的確なアドバイスができる人材の育成を、社会保険や税制の専門家の協力も得ながら進めていただきたい。国として現場で活用されるまで徹底的に寄り添った支援が必要だ。力強い賃上げの流れを中小企業や地方にどう波及させていくのか。
医療・福祉従事者
公定価格で運営する医療や福祉分野では、物価高の影響を価格に転嫁できず、賃上げを求める切実な声が数多く公明党に寄せられた。現場の声を踏まえ、臨時国会における質疑や首相への提言を通じて、医療・福祉分野の賃上げを確実に実施するよう強く要請した。
その結果、2024年度の予算編成で焦点となっていた診療・介護・障がい福祉サービスの報酬改定において、医療・福祉現場で働く人の賃上げを促すための措置が盛り込まれた。これを契機に、現場で働く皆さまが物価に負けない賃上げを実感できるよう、取り組みを加速していただきたい。併せて、今回の改定による処遇改善の効果や今後の物価・賃金上昇の状況を見極めながら、さらなる対応も検討すべきだ。
「年収の壁」解消
「年収の壁」解消策について、昨年10月に始まった「支援強化パッケージ」だが、導入を躊躇する事業所が多く見られる。
制度の周知徹底や改善とともに、2年間の期間が過ぎても、年収の壁を気にせず働けるよう、その後の見通しを示すことなどを通じて利用を促進していくべきだ。
子育て支援
大学など経済負担軽く
政府は昨年、「こども未来戦略」を決定し、今年からの3年間で実施する約3.6兆円規模の加速化プランと、財源確保の基本骨格を示した。加速化プランには、児童手当の大幅拡充をはじめ若者世代の所得向上、「こども誰でも通園制度」の創設、育児休業制度の大幅拡充など新たな取り組みが豊富に盛り込まれた。一昨年の11月に公明党が提案した「子育て応援トータルプラン」がベースとなっており高く評価する。
公明党が一貫して取り組んできた、さまざまな困難を抱える子どもや家庭への支援策もしっかり盛り込まれている。例えば、今年から障がい児の日常生活に欠かせない義肢や補聴器、車いすなど補装具費の支給制度の所得制限を撤廃することとなった。児童扶養手当も拡充する。大事なことは、未来に希望が持てるよう子育ての安心を届けることだ。若者や子育て世帯に対し、取り組みの具体的内容や実施時期などについて、当事者の目線に立った分かりやすい説明をお願いしたい。
給付型奨学金など
こども・子育て政策の抜本強化には、高等教育のさらなる負担軽減が必要だ。公明党は、経済的な理由で学びを諦めることがない社会を築くため、経済的負担が大きい家庭から段階的に大学などの高等教育の無償化を推進している。
第1弾として24年から給付型奨学金と授業料などの減免を多子世帯と理工農系の中間層への拡大。第2弾として25年度から多子世帯の授業料などが無償化されることになった。そして30年代の大学などの無償化をめざし、この開かれた無償化の道を決して後退させることなく、着実に進める決意だ。高等教育の無償化についてさらなる対象拡大を強く求める。
公教育の再生
こども未来戦略には「公教育の再生」が盛り込まれた。公明党は、教育は「子どもの幸せのため」であるとの理念の下、子どもの可能性を開くことに焦点を当てた公教育の再生に取り組むべきと考える。
例えば、午前中は現行の集団学習形式の授業で友達と協力して学ぶことの良さを経験しながら社会性を身に付け、午後は個別学習形式で探究学習や、文化芸術やスポーツ活動、企業実習、自然体験などの個々のニーズにあった学びで自分の強みや得意を伸ばす。
まずは大人や社会が総出で子どもの教育に関わり、多様な子どものニーズに応える「チーム学校」を確立し、多様で専門性が高い教職員の活躍を促進することが必要だ。
ヤングケアラー
ヤングケアラーについて、実態の把握、支援の取り組みについての自治体格差の解消、18歳以降の切れ目のない支援などが求められる。
そのため、ヤングケアラーを国や自治体などによる子ども・若者支援の対象として法律に位置付けるとともに、来年度から施行予定のこども家庭センターの全国展開によるきめ細かな支援を効果的に実施することで、地域での支援体制を抜本的に強化すべきだ。
男女の賃金差を是正
公明党女性委員会が08年に提言し、粘り強く取り組んできた「女性の健康ナショナルセンター」が4月に開設される。生涯にわたる健康は女性活躍の基盤であり、女性の健康・疾病に関する研究の司令塔である同センターが、機能をいかんなく発揮することを期待する。
従業員301人以上の企業において、男女の賃金差の公表が義務付けられた。男女の賃金差を是正するために、こうした情報公開をきっかけとして、各企業による取り組みを推進することが重要だ。同一労働同一賃金の徹底や、非正規雇用から正社員への転換、リスキリングなどの能力開発を推進するとともに、従業員300人以下の企業についても男女間賃金格差に関する情報公開の義務化を検討すべきと考える。
公務員についても昨年から、男女の賃金差の公表がスタートした。民間企業で活用されている「女性の活躍推進企業データベース」を参考に、情報を集約して比較・検索できるウェブサイトを整備するなど、さらなる「見える化」と賃金差の是正に取り組むべきだ。
外交など
「人間の尊厳」中心に据えて
核廃絶、核軍縮
ロシアによる核兵器の威嚇や北朝鮮の核開発など、核兵器を巡る安全保障環境は厳しさを増している。首相も言及した通り「人間の尊厳」を中心に据えた外交、国際協力が大事であり、唯一の戦争被爆国である日本が、その取り組みを主導していくべきだ。
その中で「『核のない世界』に向けた国際賢人会議」の取り組みは重要だ。昨年、長崎で開催された第3回会合では、26年核不拡散条約(NPT)運用検討会議に向けた、最終成果物の検討が開始されたと伺っており、核のない世界のビジョンとそこに至る現実的な道のりの議論がされることを期待する。併せて政府には、核兵器の非人道性を伝える取り組みを加速させるとともに、新たに始まった「ユース非核リーダー基金」の研修が30年まで着実に遂行され、被爆の実相を世界に伝えていく役割を担う多様な人材が輩出されることを強く期待する。
先月、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のメリッサ・パーク新事務局長と会談した。その中でパーク氏は、核兵器の被害者援助や環境修復における日本の貢献をはじめ、核保有国と非保有国の橋渡し役としての日本の役割に期待していた。
公明党は引き続き、(核禁条約締約国会議への)日本のオブザーバー参加を求めるとともに、議員派遣を続け、市民社会の皆様と力を合わせ、わが国が一刻も早く核禁条約を締結できるよう、環境整備に全力を尽くしていく。
気候変動対策
世界の(二酸化炭素)排出量の約半分を占めるアジアの脱炭素化が焦点であり、日本のリードが重要だ。今年1月、ベトナムで初めて日本企業による廃棄物発電施設が完成した。わが国の高い技術による温室効果ガスの排出削減のみならず、現地での雇用創出や経済発展などの効果が期待される。政府は、こうした二国間クレジット制度(JCM)の拡大へ、関係国との協議の加速や日本企業が参加しやすい支援の充実に取り組むことが必要だ。
先日、公明党は若者代表の皆さまから政策提言を頂いた。未来の世代の立場に立って地球環境を保全していくことが私たちの責任だ。その意味において、政府の気候変動対策の政策決定プロセスにおいて、未来の代表たる若者の意見を積極的に取り入れるべきだ。
農林水産の活性化
政府は、四半世紀ぶりに「食料・農業・農村基本法」の改正などを行うこととしている。まずは、有事を含む新たな法整備を進めるなど、あらゆる施策を総動員して、食料安全保障を確立すべきだ。
その上で、環境配慮型農業への転換が極めて重要だ。徳島県の小松島市と阿南市では、生産者や行政などが連携し、有機農業の拡大や特別栽培米のブランド化を進めている。このような取り組みが、農産物の付加価値を高めることになり、適正な価格形成や、生産者の所得拡大、輸出額の増加、世界に誇れる農業への転換につながると期待する。来年度予算案を基に、有機農業拡大への支援を着実に実施するとともに、今後こうした施策の拡充に取り組み、環境や健康に優しい農業をわが国の主流とすべきだ。
岸田首相らの答弁(要旨)
【岸田文雄首相】
<能登半島地震>必要な対策と財政措置を講じ、被災者の帰還と被災地の再生まで責任を持って取り組む。仮設住宅は集会所設置、窓の複層ガラス化など積雪・寒冷地向け仕様、バリアフリー化を進める。能登半島の実情、利用後も見据え、木造仮設住宅の建設なども進める。ボランティア車両の高速道路の無料化など、ニーズを踏まえた取り組みを進めていく。
<政治とカネ>政治資金規正法などについて、今国会でしっかりと議論ができるよう党として考え方を取りまとめる。私が先頭に立って国民の信頼回復に向けて取り組む。
<中小企業の賃上げ>地方版政労使会議を有効に活用することが重要と考えており、積極的に開催し、賃上げ支援策を周知する。あらゆる施策を総動員して賃上げを後押しする。医療・介護・障がい福祉で確実に賃上げを実現するが、物価の動向などを見極めていく必要があるとの(山口代表の)指摘は、その通りだ。
<子育て・教育支援>高等教育費の負担軽減を中心に、経済的支援の強化や若い世代の所得向上の取り組みについて適切に見直しを行う。ヤングケアラーについて、法改正し、国・地方公共団体などが支援に努めるべき対象に明記することで、自治体間の取り組みの格差の是正や、切れ目ない支援につなげる。
<外交など>唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させる形で、核兵器のない世界に向けた現実的で実践的な取り組みを継続強化する。2021年の地球温暖化対策計画の策定に当たり若い世代からヒアリングした。次回以降も積極的に声を聴いていく。
【斉藤鉄夫国交相(公明党)】
<交通の安全>あらゆる交通モードにおいて、運輸安全マネジメント制度をより積極的に活用し、事業者の安全管理体制を一層強化する。