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【主張】フーシ派の船舶攻撃 停止にはイランへの働き掛け重要
中東のパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配し、イスラエルに対する武装闘争を繰り広げている抵抗運動組織ハマスと、イスラエル軍との戦闘の影響は、世界の貿易を大きく混乱させる事態に波及している。
中東のイエメンで活動する反政府武装勢力で、イスラエルを敵視しているフーシ派が、紅海を通過する民間の貨物船を「イスラエルと関連している」とみなして、攻撃しているのだ。船舶の航行の安全を脅かす蛮行であり、許されない。
アフリカ大陸とアラビア半島に挟まれ、北側は地中海に通じ、南側はインド洋と接する紅海は、欧州とアジアを結ぶ重要な貿易航路である。紅海を利用した貿易は、世界の海上貿易の約15%を占めている。
フーシ派の攻撃は昨年11月19日に、日本郵船が運航する貨物船が乗っ取られ、乗組員25人(日本人はいない)が人質にされたのを皮切りに、主に欧米諸国などの貨物船に対して、今月16日までに約30回発生している。日本では、日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社が既に、紅海を通航しないことを決めた。
国連安全保障理事会(安保理)は今月10日、フーシ派に貨物船への攻撃の即時停止を要請するとともに、各国が自国の船舶を防衛する権利に言及した決議を採択した。この決議は、日本と米国が共同で起草したものだ。決議に基づき、米軍はフーシ派への攻撃を始めたが、フーシ派は強硬な姿勢を崩しておらず、依然、貨物船への攻撃を繰り返している。事態を好転させるには外交努力も不可欠だ。
特に、フーシ派の後ろ盾になっているイランへの働き掛けは重要だ。岸田文雄首相は先月、イランのライシ大統領と電話で会談し、フーシ派に対して乗っ取った船と人質の解放や、貨物船への攻撃の停止を説得するよう求めた。イランはフーシ派に働き掛けているというが、進展はない。
日本とイランは意思の疎通を継続すると合意しており、フーシ派への働き掛けを強めるよう、イランに粘り強く求めていくべきだ。